(2)光り輝く明るい霊界と、悲劇が蔓延する暗黒の地上世界
霊界と地上世界との根本的な違い
高級霊からの霊界通信によって、霊界と地上世界の根本的な違いが明らかにされました。霊界と地上界とを比較すると、あらゆる面でこの2つの世界が、きわめて対照的であることが分かります。その違いを一言で表現すれば――「霊界は光り輝く明るい世界であるのに対して、地上世界は霊的光がほとんど届かない暗黒の世界である」ということになります。霊界は、従来の宗教で説いてきた“天国や極楽”のような理想的な世界であり、地上世界は、苦しみに満ちた“地獄”のような世界であるということなのです。
霊界人と地上人の違いも明白です。霊界ではすべての人々が霊的成長を志向し、霊的成長が真の幸福につながるという「霊的価値観」が常識となっています。そして神の摂理である「利他的生き方」が人々の規範となっています。その結果、すべての人間が喜びと幸福感に満ちあふれています。地上人から見ると、大半の霊界人は宗教が理想としてきた聖人のような者たちばかりなのです。
それに対して地上人は、物欲と肉体的快楽を最優先して求め、モノの多さが幸福を左右するという「物質的価値観」にとらわれています。物欲・肉欲を超越した聖人と言えるような人間は、ごく稀にしか存在しません。そして地球全体が「利己主義」に支配され、苦しみ・悲しみ・悲劇を蔓延させるようになっています。地上世界では当たり前になっている“悲劇”は、霊界には一切存在しません。苦しみや悲劇は全く見当たりません。
このように霊界と地上世界は、あらゆる点において根本的に違っています。
すべてが明るく調和状態にある霊界
霊界では「神の摂理」の支配のもとで完璧な秩序と調和状態が保たれ、「霊的同胞世界」が実現しています。すべての存在が眩しいほどの光と美しい色彩に包まれ、そこに住む人々は皆、生きていることの喜びに満たされ、神を心から賛美しています。芸術が花開き、各人が他者への奉仕の精神に満ちあふれ、持っているものを持たざる者に分け与えること(利他性)が常識となっています。常に生命力と利他愛と繁栄の輝きが満ち満ちています。
霊界には、地上世界のような苦しみや不安や恐怖、絶望や落胆や意気消沈といったものは一切ありません。不平等感や不公平感を抱いている者は一人もいません。全員が他者への奉仕に心からの喜びを持ち、お互いが思いやりと愛によって結ばれています。各人が適材適所の仕事に携わり、仕事自体が奉仕となり、それが喜びと幸福の源泉となっています。こうして広大無辺の霊界では、調和と秩序が隅々まで行き渡っているのです。
一方、私たち地上人を取り巻く自然界も、調和と秩序の中で美を表しています。その調和した静けさの中に身を置くとき、霊的エネルギーがもたらされ、疲れた心は癒されます。私たちは調和した自然界の美しさに感嘆し、無条件に安らぎを得て、心の底から喜びが湧いてきます。自然界は、霊界の素晴らしさの一端を地上世界で象徴的に表現しているのです。
暗黒の地上世界
そうした調和状態にある霊界や自然界から、地上の人間世界に目を転じると、そこはまさに暗黒の世界となっています。地上人がつくっている世界は、調和や秩序や美とは正反対です。苦しみや悲しみや絶望があるのは地上では当たり前のことであり、喜びに満ちあふれている人はほとんどいません。多くの人々が不安と恐れを抱きながら、その日その日を過しています。
シルバーバーチは、霊界から見た地上世界の様子を次のように述べています。
「光もなく活気もなく、うっとうしくて単調で、生命力に欠けています。たとえてみれば弾力性のなくなったヨレヨレのクッションのような感じで、何もかもだらしなく感じられます。どこもかしこも陰気でいけません。したがって当然、生きるよろこびに溢れている人はほとんど見当らず、どこを見渡しても絶望と無関心ばかりです。(中略)この地上に見る世界は幸せがあるべきところに不幸があり、光があるべきところに暗闇があり、満たされるべき人々が飢えに苦しんでおります。」
地球上は、常に悲劇に覆われてきました。そして21世紀の現在も、地球人類は悲劇の中で苦しんでいます。そうした状況においてある者は、現実世界の中に何とか喜びと幸福を見いだそうとします。考え方や見方を変え、未来に希望を見いだそうとしますが、その多くが虚しい結果に終わっています。
霊界の人々から見れば、地上の人間界は“地獄”に等しい世界です。苦しみに喘いでいる人、生きる目的を失って絶望の中にいる人、悲しみと怒りしか持つことができない人――このような人々が数え切れないほどいるという事実が、まさに地球が“暗黒の世界”であることを物語っています。
地球上の悲劇を見て、心を痛めてきた霊界の人々
霊界の人々は現在に至るまで、こうした地球上の惨状・悲劇をずっと眺めてきました。胸が張り裂けるような思いで、地球人類の苦しむ姿を見続けてきたのです。シルバーバーチは――「苦しむ本人よりも、救いの手を差し伸べることができない霊界人の方がさらに苦しいのです」と言っています。そしてそうした霊界人の心境を代弁して、次のように述べています。
「私たちの心にあるものは、嘆き悲しんでいる人々、疑念と恐怖にさいなまれている人々のことばかりです。そういう人たちの人生に少しでも安らぎを与えてあげるものをお届けしないことには、私たちの心も安まらないのです。」
何という深い愛情でしょうか。霊界の人々は今日まで、悲劇の中で苦しむ地上の人間の姿を見てずっと心を痛めてきたのです。地球上に蔓延する悲劇を、霊界の人々は知り尽くしています。そして当の地上人よりも、もっと深い悲しみを抱いてきたのです。苦しむ我が子を目の前にした親と同じような心境で、地上人類の悲劇を自分の苦しみとして眺めてきたのです。
地球上に発生するさまざまな悲劇
地上世界の悲劇と言えば、真っ先に「戦争」と「貧困」と「飢餓」が思い浮かびます。誰もが、そうしたものは地球上に存在してはならないことをよく知っています。そしてその悲惨な状況の中で苦しむ人々に心から同情を示します。「戦争」と「貧困」と「飢餓」は、まさに地上世界の悲劇の代表と言えます。
しかし地球上の悲劇は、それだけにとどまりません。戦争や貧困や飢餓は人間の肉体生命を脅かす悲劇ですが、人間の霊や精神(心)を危機に陥し入れる悲劇もあります。人間が霊的存在であることを考えると、霊的次元や精神的次元の惨状は、戦争や飢餓以上に深刻です。霊的次元の悲劇とは、具体的には「間違った宗教による霊的成長の阻害と霊的牢獄化」を意味します。それは人間に“魂の病気”を引き起こします。精神的次元の悲劇とは「人間の精神(心)の堕落や異常性」のことで、“精神(心)の病気”と言えます。霊的次元や精神的次元の悲劇は、いずれも人間にとって最も重要な霊的成長を妨げることになります。
一方、地球上の悲劇は人間界の出来事だけにとどまりません。人間を取り巻く生命界(動物界・植物界)にも悲劇は及んでいます。神から生命を与えられ、地球上に生存するようになったのは人間だけではありません。「霊的無知」によって人間は、人間以外の生命体を虐待し、悲惨な状況に陥し入れています。そしてそれが「環境破壊」を引き起こし、最終的に人間自身に災いを招くことになっています。人間の霊的無知から発生した他の生命体(動物・植物)への虐待は、まさに地球全体にかかわる悲劇なのです。
以上述べてきた悲劇のケースはいずれも地球上における出来事ですが、地上世界の悲劇は霊界にも反映し、霊界の下層に別の悲劇を発生させることになっています。落ちこぼれとも言うべき霊的落伍者が次々と地上から霊界に送り込まれ、そこに文字どおり“地獄”と言ってもいいような霊的な暗黒世界をつくり出すことになっています。これは霊界と霊界人にとって大きな悲劇です。
本章では、このような悲劇を一つ一つ取り上げてその実情を見ていきますが、その前にさまざまな悲劇を発生させている“根本原因”、地上世界の“悲劇の元凶”について見ていきます。