(2)霊界の宗教と信仰

――地上の宗教とは正反対の霊界人の宗教・信仰

ところで、死後の世界である霊界には宗教があるのでしょうか。もし宗教があるとするなら、死後、私たちは宗教を信じることになるのでしょうか。長年、スピリチュアリズムと関係を持ってきた人間(スピリチュアリスト)であっても、「霊界には宗教があるのか?」と尋ねられると、返事に困ってしまいます。

ここでは霊界における宗教と信仰について見ていきます。

霊界が本来の世界で、地上世界は一時的な仮の世界

本論に入る前に、予備知識として霊界と地上界の関係を確認しておきます。死後の世界である霊界では、地上世界を去った無数の人間が、霊界の住人として生活を営んでいます。かつて地球上で生活し、死を迎えた人間は皆、霊界にいるのです。そこには歴史上の有名人物、例えばイエスやシャカやムハンマド(マホメット)もいます。もし皆さんが望むなら、死後、霊界でそうした人間と会うことも可能です。

死によって肉体を脱ぎ捨てた人間は全員、「霊」ということになります。かつて地上で生きていた人間は、現在「霊」として霊界にいるということなのです。地上人生は、いくら長生きしてもせいぜい100年ほどですが、霊界での生活は永遠です。千年どころか一万年、十万年……と続きます。考えてみると、とても不思議なことですが、それは厳然とした事実なのです。

そこには人智を超えた神の深い配慮があります。地上生活が100年そこそこであるのに対して、霊界での生活が永遠であるということは、「地上人生は霊界人生の一部分である」ということを意味しています。ところが大半の人間は霊界のことを知らないために、地上人生をすべてと捉え、“死ねばそれで終わり”と考えます。

永遠の世界である霊界こそが人間にとっての本来の世界であり、今生きている地上世界は一時的な仮の世界であるということが分かれば、死を恐れる必要はなくなります。死を恐れることは、実は馬鹿げたことなのです。しかし実際には地上人の多くが、一時的な仮の世界をすべてと錯覚し、死を恐れながら人生を送っています。

霊界に存在する「唯一・共通の宗教」

今述べてきたように、人間にとって本来の世界である霊界には、この地球とは比較にならないほど多くの人間が「霊」として生活しています。地上を去った過去の人間は皆、霊界で生きているのです。そしてその霊界には“宗教”があります。霊界のすべての霊たちは宗教を信じ、熱心に信仰生活を送っています。

霊界では、地上世界のような“宗教を信じる人とそうでない人”という区別はありません。それは霊界の人間全員が、宗教を信じているからです。さらに驚くことに霊界には、地上のような多くの宗教や宗派はありません。霊界にはたった一つの宗教があるだけで、全員がその宗教を信仰しているのです。すべての人間が「唯一・共通の宗教」を信じ、その宗教の信者になっています。霊界には一つの宗教しかないため、地上のような宗教間・宗派間の対立や争いはありません。

以上が、霊界の宗教についての概要です。こうした霊界の宗教と地上の宗教を比較すれば、「地上の宗教の何が問題で、どこが間違っているのか」は一目瞭然です。実はそれが、スピリチュアリズムの「宗教観」の内容になっているのです。

霊界における「唯一・共通の宗教」とは

では、霊界の宗教とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。ここで霊界の宗教について、もう少し詳しく見ていきます。『シルバーバーチの霊訓』等の高級霊界通信を通じて、霊界ではすべての人間(霊)が共通の宗教を信じ、共通の信仰対象を持っていることが明らかにされています。さらにその共通の宗教の内容も、具体的に示されています。霊界における「唯一・共通の宗教」の内容を要約すると、次のようになります。

①霊界では、大霊である「神」が唯一の信仰対象となっています。地上の多神教宗教のように、多くの神々を信仰対象とすることはありません。大霊という「唯一神」のみが霊界の宗教の信仰対象であり、それ以外に信仰対象は存在しません。

「イエスを崇拝の対象とするのは間違いです。崇拝の念は大霊に捧げるべきであって、大霊の使者に捧げるべきではありません。」

『シルバーバーチの教え(上)』(スピリチュアリズム普及会)p.138

地球上にも、唯一の絶対神だけを信仰対象とする“一神教宗教”が存在します。キリスト教やイスラム教・ユダヤ教がその代表で、世界人口の多くがこれらの宗教に所属しています。しかし、そこでの神の認識は真実とは大きく異なっており、人間が勝手な想像によってつくり上げた偽りの神のイメージがあるだけです。「唯一神」を信仰対象としたことはよかったのですが、肝心の神の内容が事実とかけ離れていたため、間違った信仰をすることになっています。

地上世界では、天使や妖精といった霊的存在を神々(*これらはしばしば“守護神”などと呼ばれる)として信仰対象にしたり、歴史上の人物を聖人として崇拝し、祈りの対象にしてきました。

スピリチュアリズムは、イエスによって始められた「地球人類救済運動」であり、イエスはスピリチュアリズム運動の全体を統括する最高責任者です。イエスの指示のもとで、スピリチュアリズム運動は展開しています。しかしスピリチュアリズムでは、イエスを信仰対象とするようなことはありません。イエスを尊敬し敬意を表することはあっても、神の座に祭り上げるようなことは決してありません。

②霊界の宗教は、大霊である「神」と同時に、神が造った「摂理(法則)」を信仰対象としています。「神」と「神の摂理」が霊界人にとって共通の信仰対象となっています。神は、厳格な摂理を通して霊界と地上界を支配し維持しています。その摂理によって“神の愛”は、平等・公平にすべての人間や生命体に行き渡るようになっているのです。霊界人にとって絶対服従すべき信仰対象は「大霊(神)」とその「摂理」であり、それ以外には存在しません。

「私たちが忠誠を尽くすのは、一つの教義ではなく、一冊の書物でもなく、一つの建造物でもなく、生命の大霊とその永遠なる摂理です。」

『シルバーバーチの教え(上)』(スピリチュアリズム普及会)p.41

霊界における宗教の信仰対象は「唯一神(大霊)」だけですが、それに関してシルバーバーチは次のような興味深い話をしています。

「私自身、そういう考えに到達するまでには、ずいぶん長い年月が要りました。それというのも、地上時代の私は多くの神を崇拝の対象としていたからです。その考えを改めて、この宇宙には“唯一・絶対の大霊”が存在し、それが果てしない全大宇宙のあらゆる生命現象をコントロールする“永遠・不変の摂理”として顕現しているという考えを否応なしに認めざるをえなくなったのです。」

③霊界では「神の摂理」による支配がすべての人間(霊)に認識されており、全員が自発的に摂理を遵守しています。霊界には、地上の宗教組織のような指導者の命令といったものはなく、摂理だけが霊たちを規制しているのです。

霊界では「神の摂理」に一致した言動や生き方が、無条件に喜びと幸福感をもたらします。摂理に反した行為は外形に醜さとして表れ、その不正が誰の目にも明らかになるため、摂理に反した行為を意図的に行うような者は霊界では存在できなくなります。そうした人間は“地縛霊”となり、周りの人々から身を隠して生活するようになるのです。霊界での法律は神の摂理だけであり、地上世界での法律は一切意味を持ちません。

④霊界では全員が、神の摂理に従って生活しています。その摂理の中で最も重要なものが「霊的成長」に関係する2つの摂理――「利他性の摂理」と「カルマの摂理(因果の摂理)」です。「利他性の摂理」によって支配された霊界では、“利他愛”がすべての人間にとっての行動規範となっています。霊たちはお互いに尽くし合い、一人一人が全体の利益(霊的向上)を求めて奉仕活動に励んでいます。各自の仕事はすべて、他者への奉仕になっているのです。このように霊界では全員が「神の摂理」に従って利他的な生き方をしており、それがそのまま宗教的実践・信仰実践になっています。

⑤霊界の宗教には、地上のような宗教組織(教祖・指導者)や宗教形式(教義・儀式・布教)といったものは一切存在しません。地上では大半の宗教が“組織”を形成し、そのもとで宗教活動を展開しています。多くの信者を抱える世界宗教には、巨大な宗教組織があります。

地上では組織による運動をいかに上手に進めるかが教団発展のカギになりますが、霊界にはそうした宗教組織はありません。“教祖(創始者)”もいなければ、教祖の教えや啓示を記したとされる“教義”もありません。教義に基づく“儀式”も、組織を拡大するための“布教活動”も一切ないのです。このように霊界の宗教は、地上の宗教とは根本的に違っています。地上の宗教を基準とするなら「霊界には宗教はない」ということになりますが、霊界ではすべての人間が深い信仰生活を送っているのです。

⑥霊界の宗教には、地上のような人間の集まりである組織はありません。当然、組織による指導も監視もありません。「一人一人が自発的に神の摂理にそった生活を心がけ、霊的成長を目指す」という形での宗教があるだけです。霊界の宗教とは、地上のような宗教活動・宗教形式ではなく、日常の生活・行為そのものです。摂理に一致した利他的な生き方こそが信仰であり、宗教なのです。

⑦霊界での人生は、地上世界とは違って永遠に続きます。その永遠の霊界での生活の目的は――「霊的成長」の一言で言い尽くされます。霊界では誰もが、霊的成長を目指して日々の生活を送っています。霊的成長こそが人間にとっての最高の宝であり、最高の幸福・喜びをもたらすものであることを実感しているのです。したがって霊界の宗教の目的は、必然的に「霊的成長」ということになります。

地上では、多くの人間が宗教に物質的な利益を期待し、神に祈りを捧げています。宗教を、金銭や地位や名声を得るための手段と考えているのです。しかし霊界では、宗教に物質的な利益を期待する人間は一人もいません。地上の宗教組織(教団)の中には精神の向上を目標に掲げているところもありますが、そうした教団も実際には“宗教エゴ・組織エゴ”に翻弄されて「物質的価値観」に縛られています。

地上の宗教の中で、真に人間の霊的成長を目的としているものはありません。それに対して霊界では、全員が真っ先に霊的成長を願い、霊的成長を求めて生きることが信仰になっています。このように霊界の宗教と地上の宗教では、根本的な違いがあるのです。

霊的成長は「神の摂理」に一致した生き方を通して達成されます。その摂理の中で特に重要なものが「利他性の摂理」と「カルマ(因果応報)の摂理」です。霊界では、利他愛の実践と無償の奉仕が日常におけるすべての行為となっており、それによって霊的成長が促されるようになっています。

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