(6)思念によってつくり出された霊的存在者
――“想念霊・化身霊”
1)霊界下層にいるさまざまな霊的存在者たち
――地上の霊能者が霊視する霊的存在者とは
霊界の下層には多くの霊的存在者がいます。霊能者が見る霊的存在者について知っておくことは、彼らのニセ情報に惑わされないためにとても大切です。霊界の下層、すなわち「幽界」には、どのような霊的存在者がいるのでしょうか。
地上の霊能者によって霊視される幽界の霊的存在者を整理すると、次のようになります。
①人間の霊
――守護霊・背後霊・未熟霊・低級霊・邪悪霊
幽界の霊的存在者として真っ先に挙げられるのは、他界した人間の霊たちです。その中には、地上人を背後から導いている「守護霊」や「背後霊」がいます。彼らは善い影響をもたらそうとする善なる人霊です。
それとは反対に、幽界には霊的成長の劣る「未熟霊・低級霊」が多く存在します。こうした霊たちは、地上臭を十分に拭い去ることができず、幽界の最下層に留まり続けています。その中には、自らつくり出した霊的暗黒の境域に閉じ込められて苦しんでいる者がいます。自分の死を悟ることができず、依然として地上と同じ生活を続けている者たち(*前述したタイプ【1】の地縛霊)もいます。地上人の肉体を共有するようにして快楽を味わおうとするタチの悪い者たち(*タイプ【2】の地縛霊)もいます。また死を自覚したものの、いたずら好きで地上人をからかい困らせては喜ぶといった低級霊もいます。さらには妬みや憎悪から意図的に地上人に働きかけ、冷酷非道な悪事を繰り返す邪悪霊・凶悪霊の類もいます。
②天使・妖精
③動物の幽体
また幽界には、地上で“ペット”としてかわいがられていた犬や猫などの「動物の幽体」も存在します。これらは天使によって管理され、飼い主(愛を与えた人間)が霊界に来るまでその姿を保ち続けます。そうした動物の幽体が地上の霊能者によって認識され、“動物は死後も霊界で生き続ける”との考えを生み出すことになりますが、実際には一時的に姿を維持しているだけです。
これについては本章(7)で説明します。
④幽体離脱中の地上人の霊体
また幽界では、幽体離脱中の「地上人の霊体」が見られることもあります。そのとき地上人は、地上世界で睡眠中か催眠状態にあります。その霊体には長く伸びる“シルバーコード”が付いているため、他界した人霊との区別がつきます。幽体離脱中の地上人(霊体)の意識は、他界者のようにしっかりとしているのが普通ですが、中には夢遊病者のようにボーッとした意識状態でいることもあります。多くの場合、霊体の脇に守護霊がいて導いています。
⑤想念霊 ・化身霊
幽界の下層にはこうしたさまざまな霊的存在者がいますが、それ以外にも「想念霊(思念霊)」や「化身霊(変化霊)」という特殊な存在がいます。幽界の下層には想念霊や化身霊が数多く存在し、地上の霊能者によって霊視されます。すでに見てきた下級天使の思念によってつくられる「妖精」は、この想念霊に相当します。
以上、幽界下層にいる霊的存在者について述べてきました。これらが地上の霊能者によって霊視されることになります。もう一度まとめると次のようになります。
- ①人間の霊・(守護霊・背後霊・未熟霊・低級霊・邪悪霊)
- ②天使・妖精
- ③動物の幽体
- ④幽体離脱中の地上人の霊体
- ⑤想念霊・化身霊
ここでは霊界ならではの不思議な霊的存在者である「想念霊」と「化身霊」について見ていきます。
2)想念霊(思念霊)とは
霊界における思念の形体化
天使や人間が、一つのイメージ(思念)を一定の時間保持すると、霊界ではそれが映像化したり形体化するようになります。心の内容が映像となったり形となって、周りの人たちに認識されるようになるのです。これは地上世界では起こり得ないことなので、地上人からすれば、実に不思議な現象です。現に他界直後の新参者(霊)は、幽界でこうした状況に出くわし、たいへん驚きます。
しかし“思念の形体化”という現象は、霊界ではきわめてありふれた出来事です。霊界から見ると、思念と現実が分離している地上世界こそがむしろ特殊であり、特別な世界と言えるかもしれません。
霊界では思念の形体化によって、自分の好みのモノや環境を自由につくり出せるようになります。霊界は、まさに各自の好みの想念体が環境をつくっている世界なのです。
霊がつくり出す自分の分身
思念による「形体化現象」は、モノや環境だけに限定されたものではなく、自分自身の分身をつくることもできます。天使が自分の分身(妖精)を思念でつくり、その分身たちに仕事をさせていることを述べましたが、それと同じようなことが誰にでも可能となります。こうしてつくり出された霊が「想念霊(思念霊)」です。
面白いことに想念霊は、精密なロボットのように作り主の意図にそって活動します。飼い主に忠実な犬のように主人(作り主)の命令に従って働きます。そして作り主の関心が想念霊から別のものに移ると、想念霊は消滅します。想念霊は作り主の意識が向けられている間だけ外形を維持し、分身として活動するのです。
無意識のうちに想念霊をつくり出すこともある
幽界には、天使や人間によってつくられた「想念霊(思念霊)」が数多く存在します。それが地上の霊能者によって霊視されるのです。
こうした想念霊は、人間が意図的に意識を集中させていなくても発生することがあります。後で述べるように、地上人が一生懸命に祈祷をしているときなど、崇拝対象に対する強い思いが無意識のうちに想念霊をつくり出すことになります。
*大半の地上人は自分で「想念霊」をつくりながら、それを見ることはできません。霊視能力を持った霊能者は「想念霊」を見ることがありますが、たいていの場合、その想念霊をつくり出したのが自分であるとは気づかずに、驚いたり、恐れおののくことになります。
3)さまざまな想念霊
天使と人間だけが想念霊をつくる
想念霊(思念霊)をつくることができるのは、高度の知性を持った天使と人間に限られます。ここに天使と人間の特殊性があり、神の王国の中での特別な立場が示されています。
天使が「想念霊」としての妖精をつくり出し、神の摂理を執行していることはすでに述べました。天使の行為のすべては「神の摂理」にそっているため、摂理から外れた想念霊をつくり出すようなことはありません。たまに天使がつくった想念霊が、人間の悪意に影響されたり利用されるようなことがありますが、これは例外的な出来事です。そうした事態は天使の意志から生じたものではないため、天使が責任を問われるようなことはありません。
問題は、地上の人間です。人間は“自由意志”を与えられているため、「神の摂理」に背くことができます。そして醜い思いを抱いては、たびたび“悪なる想念霊”をつくり出します。その邪悪な霊的分身が、悪質な地上人や低級霊の手足として働くようになり、善良な人々に迷惑を及ぼすことになるのです。
低級霊がつくり出す迷信上の存在物
幽界には、霊的に未熟な「低級霊・邪悪霊」の類が数多く存在します。彼らは意図的に想念霊をつくり出し、地上人に対して悪事を働きます。地上人を怖がらせたり、霊能者をからかう目的で、迷信上の存在物をわざとつくり出します。こうして“狐や狸や蛇”などが存在するようになるのです。また“竜神やサタン(悪魔)”をこしらえて霊能者にそれを霊視させ、驚かせようとします。
このように幽界では、低級霊・邪悪霊による悪事がひんぱんに行われています。
邪悪な思いは、邪悪な想念霊をつくり出す
一方、地上人が悪意を持って他人を呪ったりすると、その念が「想念霊(思念霊)」をつくり出すことになります。もちろん本人は、自分が邪悪な霊的分身をつくり出すようなことをしているとは思いもしませんが、そうしたことが実際に発生しているのです。このような事実に照らしてみると、私たち人間の思いがいかに大きな影響力を持っているのか、私たちの思考がいかに重要な責任をともなっているのかが明らかになります。
物質主義と利己主義が支配する地上世界において、人間が発生させている「想念霊」は邪悪で醜悪なものばかりです。こうした想念霊が地上人の周りを取り巻いて“毒ガス”のような霊的雰囲気をつくり出しています。その汚れた醜悪な雰囲気は、霊的に敏感な者に苦痛や不安感を与えることになります。邪悪な心を持った人間は、どす黒いオーラを発散させるだけではなく“邪悪な想念霊”をも生み出しているのです。
熱心な祈りも想念霊をつくり出す
また地上人が熱心に神仏を信仰し、真剣にお参りをしたり必死に祈祷をするようなとき、その人の念が、信仰対象とされる“神仏の想念霊”をつくり出すようなことがあります。それが霊視能力のある人間によって、実在する神仏の姿として認識されるのです。地上の信仰者の中には、自分自身でつくり出した想念体の神仏を見て、さらに信仰に打ち込むようになる人もいます。時には、物質化した想念霊を多くの人々が同時に見るような場合もあります。すると、そこに“本当に神仏がいる”ということになってしまいます。
熱心なクリスチャンが、「祈りの最中にイエスの姿を見た」と語ることがありますが、彼らが見たという“イエス”は、多くの場合、自分自身がこしらえた想念霊です。確かにそのクリスチャンはイエスを見たのですが、それは本当のイエスではなく、自らの思念でつくり出したイエス像だったのです。
想念霊がウヨウヨしている寺社や霊場
神仏の想念霊(思念霊)は、人間によってつくられるものばかりではありません。「低級霊」が、地上人をからかうために神仏の想念霊を意図的につくり出します。その想念霊を物質化させれば、さらに効果は高まります。たいへんな評判が立ち、人々を意のままに操ることができるようになります。人々が熱心にお参りをする寺社や行場・霊場などには、こうした想念霊がウヨウヨしています。低級霊にとってそこは、絶好のいたずら・からかいの場所となっているのです。
無知な霊能者は、このような状況を見て適当なことを言います。人々が何も知らないのをいいことに、この神社は磁場が高いとか、この霊場は霊的エネルギーが強くて
4)化身霊 ・変化霊 とは
グロテスクな霊的存在
幽界には、見るからに怪物のような、まるでお化けとでも言ったらいいような“グロテスク”な霊的存在者がいます。この異様な霊的存在者は、もともとそうした醜悪な姿として神に創造されたわけではありません。
実はそれは「低級霊・邪悪霊」が、自らの姿をそのようにつくり変えたものなのです。あるいは彼らのあまりの霊性の低さがそのまま身体に反映して、化け物のような容貌をつくり出してしまったものなのです。地上人の中にも、心の醜さが外見にまで表れている人間がいますが、それと同じことです。霊界では、地上とは比較にならないほど内面の状態がストレートに外面に反映されるため、容貌の醜さが何倍にも増幅されるようになるのです。
霊たちの化身(変化)
霊界では、天使や妖精や人間の霊は、必要に応じて、あるいは自分の好みに合わせて、自分自身の姿を自由に変えることができます。天使が地上圏に降りてくるときには、わざと人間の姿をとって現れます。幽界にいる妖精たちは、地上人の真似をして自分の姿や衣服をつくります(*「妖精」については先に述べたように、無意識のうちに地上人の先入観に相応した姿をとることもあります)。
一方、霊界にいる霊たちも、それと同じように自分自身の姿をつくり変えることができます。若返りを願っている者は、いつの間にか若いときの姿に戻ります。もっと背が高くて筋骨たくましい肉体がほしいと望んでいる男性(霊)は、願い通りの身体を手に入れることができるようになります。理想的な美人になりたいと切望している女性は、まさに期待通りの容姿になるのです。
このように霊界では、自分自身の姿を自由に変えることができるのです。これを“化身”とか“変化”と言います。そしてこうした霊たちを「化身霊(変化霊)」と言います。
オーラや色彩こそが霊の本質を示す
化身によって一時的につくった外面は、いつまでも維持されるわけではありません。化身を繰り返していた霊たちも、霊的成長にともない、本質的な変化こそが重要であることに気がつくようになります。「霊性のレベル」を示すものは、表面的な容姿ではなく、もっと次元の高い別のもの、すなわち“オーラや色彩”であることを知るようになります。そしてそれまでの外見に対する好みは自然に消滅していきます。
しかし他界して間もない新参霊には、「化身現象」を楽しむ時期があります。地上人が化粧やファッションを楽しむのと同じことです。彼らの多くが初めは、そうした霊界ならではの現象を喜びますが、徐々に化身現象が当たり前になり、関心が薄れていきます。
低級霊の悪意による化身(変化)
さて、化身が地上人にとって問題となるのは「低級霊・邪悪霊」の場合です。化身が低級霊によって行われると、実に厄介な問題を発生させることになります。低級霊たちは化身(変化)を利用して、霊視能力を持った地上の霊能者をからかったり、恐怖を与えようとするのです。
霊界からは、地上人の心のうちが手に取るように分かります。目の前の人間が、何を恐れ何を信じ込んでいるのかを的確に察知することができます。低級霊はそれに合わせた姿をつくって霊能者に見せるのです。稲荷信仰をする者には“狐の姿”をして現れ、蛇信仰をする者には“大蛇の姿”を装って現れます。キリスト教徒には“サタンやデビル(悪魔)の姿”で、神道信者には“神の姿”で、そして仏教徒には“菩薩や観音の姿”で出てきます。また歴史上の有名人の姿を真似て現れることもありますし、竜神や天使の姿をとって出てくることもあります。そして地上人を驚かせたり、恐れさせたりして楽しむのです。
しかし低級霊・邪悪霊が化身(変化)した姿を持続できるのは一時だけです。そうした姿を保ち続けることは、低級霊にとっても煩わしいことなのです。また化身霊として騙せるのは地上人だけであって、霊界の霊たちは皆、自分の悪事を見抜いていることを知っています。
「想念霊」と「化身霊」の違い
想念霊(思念霊)は、天使や人間が自分の分身としてつくり出した霊的存在者です。一方、化身霊(変化霊)は、低級霊が自分自身の姿を一時的に変化させたものであり、両者は根本的に違っています。
しかし地上の霊能者には、それらの区別がほとんどつきません。低級霊は、地上人を騙して困らせるために「想念現象・化身現象」を上手に用いるのです。そして無知な霊能者を、自分の手先として利用するのです。
*霊視される動物霊・竜神・サタンの実態
西洋のスピリチュアリズムには、日本のように“狐・狸・蛇・竜”といった霊的存在物が登場することは、ほとんどありません。これは地上世界の迷信や風習が、そのまま幽界下層にまで反映している実例と言えます。
浅野和三郎による和製スピリチュアリズムでは、スピリチュアリズムで言う天使を“竜神”として取り扱っています。しかしこうした認識も、やはり東洋独自の迷信や風習の影響を受けたものと言えます。一方、キリスト教の世界では、霊能者が“サタン・デビル”を見たという話を聞きます。
このような霊視の対象は実際の存在物ではなく、次のいずれかの理由でつくり出されたものなのです。
- ①霊能者の全くのウソ・作り話(*実際にはこれが一番多い)
- ②低級霊がつくり出した想念霊
- ③低級霊の化身霊
- ④霊能者自身がつくり出した想念霊
- ⑤周りの地上人がつくり出した想念霊
5)想念霊・化身霊への対処法
最後に「想念霊」や「化身霊」への対処法について見ていきます。
低級霊にとって都合のいい“無知な霊能者”
低級霊・邪悪霊は意図的に「想念霊」をつくり出したり、自らが「化身霊」となることによって地上に問題を発生させようとします。低級霊はこうした霊界ならではの現象を利用して、地上人をからかったり困らせようとするのです。ただし想念霊や化身霊の演出が威力を発揮するためには、それらを霊視できる霊能者がいなければなりません。霊能者による霊視など頭から馬鹿にして信じない人には、想念霊も化身霊も威力を発揮することはできません。
地上の霊能者に「想念霊」や「化身霊」についての正しい霊的知識があるなら、低級霊に騙されたり、挑発や脅しに乗せられることはありません。しかし残念ながら地上のほとんどの霊能者は、こうした問題に関する基本的な霊的知識さえ持っていません。そして霊視によって見えた姿をそのまま信じ込み、低級霊にいいようにからかわれ、利用されるようになっています。
本来は、低級霊の働きかけなど初めから相手にせず、彼らの騙しの手口を暴くべきなのです。それができる霊能者には、低級霊は恐れを抱いて近づかなくなります。騙しやすい霊能者であることを知ったうえで、低級霊は接近をはかるのです。“絶好のカモ”であることを見抜いて利用するのです。そして霊能者の言うことを鵜呑みにする人間が多くいればいるほど、低級霊はますます張り切ってウソを演じ続けます。“キツネだ、タヌキだ、ヘビだ”などと自慢気に語る霊能者は、低級霊にとって実に都合のいい道具なのです。
対処法【1】
――正しい霊的知識を身につける
想念霊・化身霊への対処法としては、まず第一に「正しい霊的知識を身につける」ということです。低級霊の手口を知っておけば簡単に正体を見破ることができますし、そうした地上人を低級霊は騙そうとは思わないものです。
霊視能力がなくても問題はありません。霊能者が“キツネが見えた”と言っても、低級霊の暗躍を見抜くことができます。無知な霊能者を騙すことはできても、霊的知識を持った人間を騙すことはできないのです。
対処法【2】
――低級霊の演出を無視し相手にしない
低級霊は、地上人に恐怖を与えようと常に目論んでいます。それによって守護霊の地上人に対する助力の道が遮断され、思い通りに操ることができるようになるからです。人々を脅すために悪なる想念霊をつくって圧力をかけたり、祈りの最中など霊的に通じやすいときにチョッカイを出したりします。また変化した姿を霊能者に見せて動揺を与えたりします。
低級霊による挑発はいっさい無視し、全く相手にしないことです。そして不安や恐怖心を抱かないように心がけるなら、低級霊はそれ以上、働きかけることはありません。
「正しい信仰」こそが最大の防御策
霊的真理に基づく本物の信仰は、「低級霊・邪悪霊」に対する最高の防衛策となります。善なる霊と一つになっている者には、悪なる勢力は近づけません。利他愛の実践に専念している人間には、霊界から最大限の守護と導きが与えられます。高級霊を信頼して人類のために人生を捧げようとするなら、何ひとつ心配はいらないのです。
正しい信仰姿勢さえあれば、全く問題は発生しません。低級霊に騙されるようなことにはなりません。高級霊によって低級霊の妨害は取り除かれるようになります。「正しい霊的知識」「悪の挑発を無視する気迫」「善なる勢力の一員であるとの確信と信頼」――こうした真理に立った確固たる信仰があれば、低級霊・邪悪霊の働きかけを粉砕することができるのです。