(2)霊界からの協力者〈2〉
――“背後霊”
1)背後霊とは
守護霊と背後霊の違い
地上人には必ず一人の守護霊が付き添っていますが、それとは別に地上人の仕事や使命などを縁として、複数の霊界の援助者が背後から地上人を導くことがあります。これを「背後霊」と言います。シルバーバーチ霊やインペレーター霊のように、交霊会などで責任を持って全体の場と通信を統括している霊を「指導霊」と言いますが、この指導霊も背後霊に含まれます。
背後霊は、地上人の霊的状況や仕事の進展状況に応じて、別の霊に入れ替わったり役割を終えることもあります。この点で、守護霊との関係が一生涯にわたるものであり、場合によっては死後にもその関係が続くのとは異なっています。
背後霊の人数
背後霊の人数ですが、守護霊が必ず一人であるのに対し、背後霊の場合は必ずしも一人とは限りません。この点においても守護霊と背後霊は違っています。結論を言えば、多くの背後霊を持つ地上人がいる一方で、背後霊が全くいない人もいるということです。働きかけの対象となる地上人の「霊性や心境の高さ・使命に対する情熱・奉仕性の有無・仕事の内容や役割」に応じて、背後霊の数はさまざまになります。高い霊性を持ち、大きな使命を担っている地上人には、一人の人間に何百、何千という霊が背後霊として応援するようなこともあります。
後でも述べますが、スピリチュアリズムは無数の背後霊の協力と指導のもとで進められている大計画です。その大計画につらなる優れた交霊会では、地上の霊媒の背後に、一人の指導霊(高級霊)とその配下で働く数十人の霊たちによって“背後霊団”が形成されるのが普通です。
背後霊になる2つの目的
――地上人の援助と自らの霊的成長
霊界の霊たちが背後霊となるのは、地上人を援助・指導して、地上人が神と人類のためにより多くの貢献ができるようにするためです。これが霊界人が背後霊となる最大の目的です。霊界の霊たちは、すべて純粋な利他愛の持ち主です。地上にはめったに存在しないような気高い奉仕精神の持ち主ばかりなのです。
そうした霊たちは常に、自分の持っている能力を他の人々のために活用し役立てたいと願っています。そしてその愛の思いから、背後霊として地上人の仕事に協力することになります。地上人を導き援助することを通じて、地上人の霊的成長を促し、同時に地上人類の進化・向上に貢献しようとするのです。
「指導霊としての責務を引き受けた霊は、それまでに身につけた霊的資質の多くを犠牲にして(波動を下げて)、この魅力のない世界――と言っては失礼ですが――の圏内へと降りてきます。それは、危険と犠牲を強いられる仕事ですが、それを敢えて引き受けることができるということは、その霊の進化の水準の高さの証明でもあるのです。その犠牲的献身によって地上の人々の人生に光明をもたらし、生きる目的を見出させ、使命を成就させることになるのです。ここに愛の摂理の実践の典型があります。」
とは言っても守護霊の場合と同様、地上人を援助することだけが背後霊の仕事のすべてではありません。地上人を援助する中で、背後霊自身も霊的成長が得られるようになっています。地上人を導く苦労を通して、霊本人のカルマが切れ、霊的成長が促されるようになります。このように地上人の背後霊になることには、因果律に基づく「カルマの清算」や「霊的未熟さの埋め合わせ」という目的も含まれているのです。
2)背後霊の3つのケース
ここで「背後霊」の具体的なケースを見ることにします。背後霊には、どのような霊がなるのでしょうか。守護霊の場合は「類魂(霊界の同一界層の霊的家族)」の中から任命されることが多いのですが、背後霊の場合はどうなのでしょうか。
結論を言えば、背後霊になるのは必ずしも類魂のメンバーである必要はありません。霊界人が地上人の背後霊となる場合、大きく3つのケースに分けられます。1つ目のケースは、自分の地上時代の仕事を縁として背後霊になるというものです。2つ目は、自分のカルマの清算(*前世で犯した「罪の償い」)や、さらなる霊的成長を主な目的として背後霊となるケースです。3つ目は、スピリチュアリズムという人類救済計画を進めるために背後霊となるケースです。
以下では、一つ一つのケースについて述べていきます。
①地上時代の職業を縁として背後霊になるケース
霊界にいる霊が、かつて自分が地上時代にしていたのと同じ職業の地上人の背後霊になることがあります。地上の芸術家や音楽家・医者などには、かつて同様の職業に携わっていた霊がしばしば背後霊となっています。こうした霊たちの多くは霊界に入ってから、地上で培った能力を飛躍的に向上させることになります。地上時代とは比較にならないほどの知識と能力を身につけるようになるのです。すると「利他愛」が支配する霊界では、それを人々への奉仕のために何とか活用したいと思うようになります。その結果、かつての自分と同じような職業に携わっている地上人の背後霊となり、その人間への援助・協力を通して人類に貢献する道を選択することになるのです。
霊たちは地上人に向けて霊的メッセージを送ったり、霊界からさまざまな導き・協力をします。地上人はそれを“インスピレーション”として受け取ることになります。人によってはそのインスピレーションによって新しい発見をしたり、発明のアイデアを得ることになります。背後霊はこうした形で、地上人を通して自分が地上時代にやり残した仕事を完成しようとするのです。
医者や治療師にも、しばしば背後霊が霊界から援助しています。この場合もやはり、地上時代に同じ職業についていた霊が背後霊となっています。スピリチュアリズム運動の中で行われているスピリチュアル・ヒーリング(スピリット・ヒーリング)では、医者や治療師であった背後霊が大きな働きをしています。純粋な奉仕精神を持った地上のスピリチュアル・ヒーラーに対しては、背後から多くの霊界の医者(霊医)が働きかけているのです。
②カルマ清算と霊的成長を主な目的として背後霊になるケース
地上時代に霊的無知のために「カルマ」をつくってしまった霊の場合には、地上にいる子孫や血縁者の背後霊になることがあります。子孫に働きかけ、正しい方向へ導く努力を通じて、自分のカルマ(罪)を償い、霊的未熟さを補おうとするのです。
地上時代に人々を冷酷・非道に虐待し「大きなカルマ(罪)」をつくった霊は、霊界において大きな苦しみを味わうことになります。自分が虐待した相手が繰り返し目の前に現れ、自分の残虐な行為を見せつけられ、逃げ場のない恐怖と自責の念に苛まれるようになるのです。そして相手が地上に再生する際には、その人間の背後霊となり、役目を果たすための苦労を通じて“罪滅ぼしの道”を歩むようなこともあります。そうした場合には、背後霊としての役目は非常に過酷で厳しいものとなります。
一方、高級霊が自分自身の欠点を補強するために、自発的に地上人の背後霊になることもあります。敢えて指導困難な人間の背後霊となって自分の魂を鍛え、さらなる霊的進歩・魂の向上を求めるのです。
「地上体験は貴重なのです。その体験を得るために大勢の霊が地上にもどり、霊媒の背後霊となって自分に必要な体験を積もうと努力しているのです。それは、ある者にとっては情愛の開発であり、ある者にとっては苦しみと悲しみの体験であり、またある者にとっては知性の開発であり、感情のコントロール、つまり心の平静の
涵養 であったりします。このように地上に戻ってくる霊には、我々のように特殊な使命を帯びた者を除いては自分自身にとって何らかの目的があるものです。つまり、我々並びにあなたとの接触を通じて向上進化を遂げようとしているのです。」
*血縁関係を必要以上に重視する(あるいは間違って過剰重視する)東アジアの儒教圏の国々や社会では、守護霊や背後霊をしばしば先祖の霊や血縁者の霊と錯覚しています。先祖の霊が子孫の守護霊や背後霊となるケースは実際には、人々が考えているほど多くはありません。地上人が、あまりにも先祖や血縁者の霊にこだわるため、その念に引き寄せられて地上の子孫の前に現れるのです。地上の祖霊崇拝・先祖供養という間違った習慣が、霊界の下層にまで影響を及ぼしているのです。
血縁者が地上の子孫の背後霊になるということは、その霊に地上的カルマが残っているためか、あるいはその霊自身がいまだに地上臭を拭い去れずに未熟なレベルにとどまっているかのいずれかです。
③スピリチュアリズムの軍団の一員として背後霊になるケース
相当な霊的レベルにまで進化した高級霊が、霊界の上層界から特殊な使命を与えられて、人類救済のために地上近くに降下して背後霊となって働くことがあります。シルバーバーチなどのように“スピリチュアリズム運動”の指導霊となるケースが、これに相当します。この場合には霊本人のカルマ清算という意味合いはなく、もっぱら全人類に対する愛の行為・愛の実践が目的となります。
このケースについては次で説明します。
3)地上のスピリチュアリストと背後霊たち
地上のスピリチュアリストは「高級霊の道具」
現在の地球にとっての最大の出来事は、地球全体の霊的浄化を目的とした大規模な働きかけが高級霊界からなされている、ということです。そしてそれが地上ではスピリチュアリズムとして「霊的真理普及運動」を展開させることになっています。地上の人間はスピリチュアリズムとの関係を持った(霊的真理の価値を理解した)時点――すなわち“スピリチュアリスト”になった時点から、霊界の高級霊団の一員として霊的真理普及のための使命を担うことになります。つまりスピリチュアリストの一人一人に、高級霊団が地上に働きかけるための足場・道具となることが求められるようになるのです。
そのスピリチュアリストが真理にそって歩み、自分の利益を後回しにして「霊的真理普及」の大事業にすべてを捧げようとするとき、多くの霊界人の援助を引き寄せることになります。目的を同じくする多数の霊界人の働きかけを得て、「霊界の道具」として大きな貢献をなすことができるようになるのです。
地上の道具の出現を待ち望む高級霊たち
守護霊の場合もそうでしたが、地上人が「背後霊」に意識を向け、瞑想などを通じて感謝の思いを届けるようになると、霊的影響力と援助をいっそう受けやすくなります。また地上人が「もっともっと人類のために働きたい!」という高い心境・純粋な奉仕精神を持つなら、自動的にその決意に見合った霊を引き寄せるようになります。その意味で地上人は、心がけひとつで多くの背後霊の援助・協力を得て、より優れた「神の道具」になれるということなのです。
霊界では、霊的真理を正しく理解し、霊界の道具となって働くことができる人間の出現を、今か今かと待ち受けています。彼らは献身的な地上人の背後霊となって、地球人類の救いのために働きたいと出番を待っているのです。地上人の真剣な姿勢と犠牲精神・奉仕精神は、無私無欲の精神にあふれた多くの霊たちを引き寄せることになります。
そうした霊界サイドの霊たちの思いを代弁して、シルバーバーチは次のように述べています。
「私の世界には大霊の使者の大軍が控え、いつでも地上世界のために手助けをする用意を整え、あなたのような“道具”が、“私はいつでも用意ができております。どうぞお使いください”と言ってくださるのをお待ちしている事実を、この目で見て知っているのです。」
「皆さん方のような地上での道具がなくては、私たちは何もなし得ないということです。(中略) 皆さん方の力をお借りする以外に地上には頼りにすべき手立てが何もないのです。喜んで私たちに身を委ねてくださる人以外に、道具とすべきものがないのです。その道具が多すぎて困るというようなことは決してありません。こちらの世界では、使用に耐えられる人物の出現を今か今かと待ち受けている霊がいくらでもいるのです。私たちの方から皆さんを持ち望んでいるのです。皆さんが私たちを待ち望んでいるのではありません。」
4)背後霊に対する大きな裏切り
――“霊能者の堕落”
霊界の人々が背後霊として地上人に働きかけるとき、そこには一点の利己性もありません。地上人の幸福と霊的成長を願う利他愛以外の何ものも存在しません。そうした純粋な愛による導き・協力を受けながらも、地上人はたびたび背後霊を裏切り悲しませてきました。大きな絶望を与えてきました。その中で最大の裏切りが「霊能者の堕落」です。
霊界から“スピリチュアリズム”を進める背後霊にとって、地上の霊能者は最も頼りにすべき地上の道具であり足場です。霊能者に対する霊界からの期待は、先に引用したシルバーバーチの言葉からもよく理解することができます。その霊能者が、欲望の誘惑に負け、神の道具としての純粋な立場を離れていくのです。神から与えられた「霊能力」を悪用して、この世の富や名声を追求するようになってしまうのです。
自己の“煩悩”によって背後霊の期待を裏切った霊能者は、もはや道具として使いものにはなりません。「霊能力」という一般の人々にはない能力を持ったということは、「それを活用してもっと人々のために働きなさい。霊界の道具として貢献しなさい」ということなのですが、大半の霊能者はそうした本来の道から完全に逸脱してしまいます。この世の人間にも劣るエゴまみれ・煩悩まみれになって堕落し、“低級霊”にとって最も都合のいい道具に成り果ててしまうのです。
スピリチュアリズムの発展のためには、こうした煩悩に負けて堕落した霊能者との戦いが避けられません。一番の味方であるべき人間が“最大の敵”となってしまうような事態は、霊界の背後霊にとって何よりも悲しい出来事です。スピリチュアリズムの歴史を見ると、堕落した霊能者が常に圧倒的多数を占めてきました。まともな霊能者・自らを霊界の道具として提供するような本物の霊能者は、わずか一握りにすぎませんでした。そしてスピリチュアリズムが地球上に広く普及しようとするこの時期においても、使命から逸脱して霊界人の誠意と犠牲的歩みを踏みにじるような“ニセ霊能者”が世間に横行しています。
次のシルバーバーチの言葉は、“ニセ霊能者・堕落霊能者”に対する霊界の霊たち(背後霊たち)の嘆きを端的に示しています。
「上層界の高級霊が目にいっぱい涙を浮かべて悲しんでおられる姿を、時おり見かけることがあります。今こそと思って見守っていたせっかくの善行のチャンスが踏みにじられていく人間界の愚行を見て、いつかはその愚かさに目覚めてくれる日が来ることを祈りつつ、眺めているのです。」
「霊の道具を見出すのは容易ではないのです。たとえ見出しても、その能力を開発して正しく活用するように指導するのが、また容易なことではないのです。さらに、せっかく使いものになる段階にまで育て上げた頃には、煩悩が頭をもたげて、道に外れたことをやり始めます。」
「試行錯誤の末にどうにか継続しているというのが実状です。その原因は、せっかく目星をつけた霊能者がどこまでこちらの期待に応えてくれるかは、前もって判断できるとは限らないからです。最後の段階で堕落して使いものにならず、何十年にもわたる努力が水の泡となることがあります。」