4.組織活動によるスピリチュアリズム運動の発展

1860~1930年のスピリチュアリズム黄金期には、スピリチュアリズムは組織を設立して活発な活動を展開し、大きく発展していきます。スピリチュアリズムの組織化は、スピリチュアリズムの底辺拡大の1つの指標と言えます。ここでは主要なスピリチュアリズムの協会や組織を取り上げます。

スピリチュアリズムは組織活動を展開することによって社会に浸透し認知度を高めていくことになりますが、それと同時に組織化にともなうさまざまな問題を内蔵することにもなります。やがてその内部矛盾が、組織そのものを弱体化させることになっていきます。

(1)黄金期に設立されたスピリチュアリズムの協会・連合組織の一覧

黄金期前期
アメリカに最初のスピリチュアリズム協会(1852)
英国スピリチュアリスト協会(1873)
後にロンドン・スピリチュアリスト同盟に改称(1884)
神智学協会(1875)ブラヴァッキー夫人による
英国心霊研究協会(SPR・1882)バレット卿による
米国心霊研究協会(ASPR・1885)バレット卿による
英国スピリチュアリスト連合(NFS・1890)ブリテン夫人による
後に英国スピリチュアリスト同盟に発展(SNU・1901)
米国スピリチュアリスト協会(NSA・1893)
黄金期後期
英国スピリチュアリスト同盟(SNU・1901)
国際スピリチュアリスト連盟(ISF・1923)
世界クリスチャン・スピリチュアリスト協会(GWCSA・1931)

(2)SNU・英国スピリチュアリスト同盟

19世紀に始まったスピリチュアリズムは、霊媒を中心とする少人数の交霊会(ホームサークル)を単位として、霊界主導の中で進められてきました。ホームサークルでは、さまざまな心霊現象が霊によって演出され、霊界からのメッセージが届けられました。交霊会によって、人間は死後も霊として存在すること(霊魂説)が証明されていきました。こうしてスピリチュアリズムは、交霊会(ホームサークル)を中心として発展していきました。

数々の交霊会グループが英国各地に点在する中で、1890年にエンマ・ハーディング・ブリテンによってNFS(英国スピリチュアリスト連合)が設立され、多くのホームサークルが団結をみることになりました。NFSはブリテン夫人の他界後、1901年にSNU(英国スピリチュアリスト同盟)として発展的解消をします。

その後、SNUは英国最大のスピリチュアリストの組織として英国スピリチュアリズムの中心的存在となりました。SNUは正統派・主流派のスピリチュアリズムの代表として、英国スピリチュアリズム界をリードしていくことになります。

SNUは、ブリテン夫人を通じて霊界から届けられた七大綱領を採択しました。通信霊は、社会主義の祖ロバート・オーエン)これによって英国スピリチュアリズムの思想的な共通の支柱が確立しました。その内容は、次のようなものです。

  • ①神は全人類の父である
  • ②人間はみな兄弟である
  • ③霊界と地上界との間に霊的交わりがあり、人類は天使の支配を受ける
  • ④人間の魂は死後も存続する
  • ⑤自分の行為には自分が責任を取らねばならない
  • ⑥地上での行為は死後、善悪それぞれに報いが生じる
  • ⑦いかなる人間にも永遠の向上進化の道が開かれている

この七大綱領に対して、シルバーバーチはかなり手厳しい批評をしています。『古代霊シルバーバーチ 新たなる啓示』(ハート出版)参考

(3)NSA・米国スピリチュアリスト協会

ジョン・ウルフは、ワシントン・スピリチュアリスト協会の会長でしたが、その彼が他界後、霊媒を通じて通信を送ってきました。その通信によって1893年、NSAが設立されました。やがてNSAは、アメリカ最大のスピリチュアリスト団体になっていきます。NSAの会員は次のような原則の誓いをします。

  • ①我々は、無限の知恵を信じる
  • ②我々は、物的・霊的を問わず、自然の現象は無限の知恵の現れであることを信じる
  • ③我々は、この現れを正しく理解し、かつそれに従って生活することが真の宗教であることを確信する
  • ④我々は、各人の個性が死という変化の後にも、なお変わらずに存続することを確信する
  • ⑤我々は、死者との交流が事実であり、しかも心霊現象によって科学的に証明されることを確信する
  • ⑥我々は、最高の道徳は「他人からして欲しいと思うことを他人に行え」という金言の中にあることを信じる
  • ⑦我々は、各人に道徳上の自己責任のあること、および自己の幸・不幸は大自然の法に従うか否かによって決まることを確信する
  • ⑧我々は、向上の道は何人にも顕幽を通じて開かれていることを確信する

(4)SPR・英国心霊研究協会/ASPR・米国心霊研究協会

スピリチュアリズムは少人数の交霊会(ホームサークル)拡大によって発展していきましたが、それとは別に心霊現象の研究と検証を目的とする研究者・科学者によって組織がつくられるようになりました。1882年にSPRが、そして1885年にASPRが、バレット卿によって設立されました。

SPRの目的は当初、「霊魂説」を科学的観点から検証するところに置かれていました。その目的にそって当時の科学界の第一級の人物が集まりました。ウォーレス、クルックス、バレット、オリバー・ロッジなどです。SPRはさまざまな心霊現象に対して検証を行い、多くの実績を残しました。その過程で最初は心霊現象に懐疑的であった科学者の大半が、スピリチュアリズムを受け入れることになりました。

しかしSPR全体としては、いつまで経っても霊魂説の承認に踏み切ることはありませんでした。その状況は現在に至るまで続いています。)そうした煮え切らない態度に、コナン・ドイルは1930年にSPRを脱会しました。また1932年には、SPRの会長まで務めたオリバー・ロッジも、「SPRという組織は、何でも詐欺扱いにしてしまうための協会である」と辛らつな批判を投げかけています。

このようにSPRは、本来はスピリチュアリズムの傘下にあるべき立場を逸脱して独り歩きを始め、やがてスピリチュアリズムとの敵対関係を呈するほどになってしまいました。

(5)ISF・国際スピリチュアリスト連盟

1923年、ベルギーにおいて世界最初のスピリチュアリストによる会議が開催され、このときISFが結成されました。ISFは、スピリチュアリズムを世界に広めることを目標として数年ごとに会議を設けています。第2回目はパリ、第3回目はロンドン……、というように続き、第二次世界大戦によって中断されましたが、戦後再び復活しました。

当時のスピリチュアリズムがキリスト教色を強く反映していたのに対し、ISFはそれを払拭した純粋なスピリチュアリズムを目指しました。戦後のISFは参加資格の基準を緩め、「人間の個性は死後も存在する」「霊界と地上世界の間の交信が可能である」という2点を認めることだけとしました。

(6)GWCSA・世界クリスチャン・スピリチュアリスト協会

高級霊の通信は、キリスト教という伝統宗教が人々を不幸にしている元凶であると厳しく非難しています。現在の日本のスピリチュアリストは、モーゼスの『霊訓』や『シルバーバーチの霊訓』によって、スピリチュアリズムとキリスト教が相容れないことを常識として知っています。

しかしスピリチュアリズムの歴史の中では、そうしたスピリチュアリズムの原則が徹底しない状況が長い間続いてきました。スピリチュアリズムの知識を、宗教的・信仰的に展開する際に、それを従来のキリスト教に求めた人々によって、キリスト教の色彩を強く残したスピリチュアリズムができ上がってしまいました。そしてキリスト教とスピリチュアリズムを折衷したような考え方が広まってしまいました。

1931年、スピリチュアリズムの黄金期に、そうした折衷的スピリチュアリズムによる組織が設立されています。それがGWCSAでした。その会員になるための宣誓文を見ると明らかに分かるように、キリスト教の思想的影響が強く残されています。GWCSAが勢力を拡大するにともない、当然のこととしてSNUなどの正統派スピリチュアリズムとの間に軋轢を生むことになりました。

  • ①私は、愛なる唯一の神を信じます
  • ②私は、イエス・キリストの主なることを認めます
  • ③私は、神が聖霊の無限の力を通じて顕れ給うことを信じます
  • ④私は、人間の魂の不滅および死後も個人的に存続することを信じます
  • ⑤私は、神との交信、他界した霊との交信を信じます
  • ⑥私は、神により創造されたすべての生命は、その完成のときまで相互に依存し合い、かつ進歩するものであることを信じます
  • ⑦私は、すべてを支配し給う神の法則は、至高の正義であることを信じます
  • ⑧私は、犯した罪は、イエス・キリストの贖罪の力を通じ、本人自身の改悛と他者への奉仕によってのみ償われることを信じます

(7)SAGB・大英スピリチュアリスト協会

1872年、SAGBの前身となる協会がロンドンに設立されました。そして1964年に現在の呼称に改められました。現在この協会は、SNUと並んで英国スピリチュアリストの組織として最大規模6千人以上の会員がいると言われます)を誇っており、スピリチュアリズムのメッカのような存在となっています。そして海外に最もよく知られた英国スピリチュアリズムのシンボルと言えます。

SAGBでは一般の心霊ファンのために、講演や霊能力開発セミナー、心霊治療、リーディングなどが企画されています。SAGBと深い関わりのある人物がオリバー・ロッジとコナン・ドイルで、SAGBの施設内には2人の名前を記念したホールが設けられています。

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