(3)霊界と地上の宗教の根本的な違い
――霊界には、万人に共通の“一つの宗教”があるだけ
地上のことしか知らない大多数の地上人は、「霊界にも宗教がある」と聞くと、とても驚きます。夢物語か想像上の作り話のように思ってしまいます。しかし、霊界にも宗教があるのです。とは言ってもその霊界の宗教は、地上人が想像するものとは全く違っています。
霊界には、地上世界とは比べものにならないほど多くの人間(霊)がいます。そして、誰もが“一つの宗教”を信じています。霊界では全員が、共通の教えを受け入れ、それを実践しているのです。霊界には、たった一つの宗教しか存在しません。すべての霊界人が“共通の宗教”の熱心な信者なのです。
それに対して、地上世界は人口が少ないにもかかわらず無数の宗教が存在し、互いに対立しています。この点で霊界と地上では、宗教の状況が根本的に違っています。
ここでは“霊界の宗教”と“地上の宗教”の本質的な違いについて学んでいきます。
地上の宗教に共通する要素とは
霊界と地上の宗教の違いを述べる前に、“地上の宗教”の共通性と特徴について見ていきます。大半の地上人は、宗教について共通のイメージを持っています。現在の地球上には、キリスト教とイスラム教と仏教という“世界3大宗教”があり、それらの宗教はいくつかの宗派から成り立っています。キリスト教はカトリックとプロテスタントと東方教会という3つの宗派に分かれています。イスラム教はスンニー派とシーア派という2大宗派に、仏教も大乗仏教と上座部仏教(小乗仏教)という2大宗派に分かれています。さらにそれぞれの宗派の中には、多くの分派や教派が含まれます。
地球上の宗教には、こうした世界3大宗教以外にも、各地の民族・民間宗教(ex.インド宗教や中国の民間信仰)があります。また、世界各地にシャーマニズムやアニミズムといった原始宗教も存在しています。さらには歴史の浅い新興宗教もあります。こうしたことを考えると、地球上の大部分の人間が何らかの宗教に属していることが分かります。最近になって若者を中心として伝統宗教離れが急速に進み、先進諸国では無宗教者が増加してはいますが、大半の人間は今でも宗教に関わりを持っているのです。
地球上の宗教には、共通する要素があります。宗教の規模が大きくなって「宗教組織(教団)」がつくられるようになると「教祖(創始者)」への崇拝が確立され、教祖の神格化が始まります。そして教祖(創始者)によって説かれた教えが教団の「教義」となり、それが信者にとっての唯一絶対の真理となり、人生と生活を支配することになります。教義は、すべての信者が無条件に従うべき規則とされます。
また、大規模な組織を持った巨大宗教では、多くの信者を統制するためにヒエラルキーが形成されます。教祖(教祖の後継者)を頂点にして、教団幹部が置かれ、そのもとに多くの支部が設けられ、絶対的な上下関係と支配体制がつくられます。また、教義に基づく「儀式」がつくられ、それが救いや霊的向上のための必須項目になります。儀式を忠実に守り実践することが信者にとっての義務となり、それを無視することは信仰者として失格(背信者)と見なされることになります。こうした宗教の儀式としてよく知られているのがキリスト教の洗礼やミサや礼拝、イスラム教の毎日の礼拝や断食などです。
また組織宗教では、自分たちの教団を拡大するために外部に向けて積極的に「布教活動」を展開します。布教活動によって多くの信者を獲得した教団は、勢力を増すことになります。地上の宗教では、信者の数の多さが勢力の強さを示します。このため勢力の拡大を図る中で他の教団と衝突し、時には醜い争いや殺し合いにまで至ることもあります。さらに組織宗教では、必ず「宗教施設」が設けられます。本山の宗教施設の大きさ・立派さがその宗教・宗派の権威を示すものと見なされ、各教団は競って威容を誇る礼拝施設を建造してきました。
このように地球上の巨大宗教には――「教祖(創始者)・教義・組織(教団)・儀式・布教活動・宗教施設」という共通要素があります。古来のシャーマニズムや自然宗教などの原始宗教には教祖も教義もないものが多くありますが、それらは現在の地球上では時代遅れの宗教と見なされます。大半の人が“宗教”と言うと、「教祖・教義・組織・儀式・布教活動・宗教施設」のともなった巨大宗教を想像し、それが宗教であると考えています。
霊界と地上界の宗教の根本的な違い
――唯一・共通の宗教と、無数のバラバラの宗教
現在、地球上には数多くの組織宗教があって、それぞれが自分たちの正当性と正義を主張しています。時にその主張が、激しい対立や衝突・戦争を引き起こすことになります。
一方、霊界には地球出身の無数の霊たちがいますが、そこには地上の宗教のような対立や争いはありません。なぜなら霊界には、たった一つの宗教しかないからです。人間が地上で過ごす期間は、長くても百年程度です。地上を去った人間は皆、霊界に入りますから、時とともに霊界の人口は増えていきます。霊界には地上のような死がないため、どこまでも人口が増え続けるのです。「地上圏霊界(*地球出身の霊が住んでいる霊界)」には、現在の地球上の人口の何十倍もの人間が住んでいます。そして驚いたことに、そうした無数の人間のすべてが共通の宗教を信じているのです。霊界人の誰もが“唯一・共通の宗教”を受け入れ、それに基づく信仰生活を送っているのです。
今、私たちが生きている地上世界には無数とも言える宗教がありますが、霊界にはたった一つの宗教しか存在しません。すべての霊界人に共通する教えしかありません。これは、地上人には想像もつかない驚くべき事実です。地球上の人口の何十倍もの人間がいる霊界では、全員が「利他愛の実践」という共通の教えを受け入れ、それによって「霊的成長を求める」信仰生活を送っています。それに対し、わずか75億の人間しか存在しない地球上では無数の宗教が乱立し、それぞれが自らの正当性を主張して争っているのです。
地上世界とは比較にならないほど多くの人間がいるにもかかわらず、霊界には“唯一・共通の宗教”があるだけです。そしてそこには、地上の宗教のような教祖(創始者)はおりません。教義も組織も儀式も布教活動も宗教施設もないのです。
霊界の宗教の信仰対象とは
――「神」と、神が造った「摂理」のみ
地上の宗教に共通する教祖・教義・組織・儀式・布教活動・宗教施設という要素は、霊界の宗教には一切ありません。地上の宗教では、教祖が説いた教えが教義となり、それによって信者全員の信仰生活が決められます。地上の多くの宗教では、教祖は神から真理を託された特別な存在として神格化され、信仰・崇拝の対象となります。
では、教祖もいなければ教祖によってつくられた教義もない霊界の宗教では、何が信仰対象として崇められているのでしょうか。結論を言えば、霊界の宗教における“信仰対象”とは――「神(大霊)」と神によって造られた「摂理(法則)」です。これが霊界の宗教における信仰対象であって、それ以外にはありません。「神」と「神の摂理」だけが、すべての霊界人にとっての信仰対象なのです。
霊界での信仰とは
――日常生活における「利他性の摂理」の実践
霊界には、「神の摂理(特に利他性の摂理)を日常生活で実践する」という宗教があるだけです。日常生活が、そのまま信仰になっています。各自が自発的に神の摂理に一致した生き方を目指し、霊的成長を目的とする生活を送っているのです。地上世界と違って霊界では、摂理の働きが実感を持って認識されるため、摂理を無視するような者はいません。地上人の一般的な宗教のイメージを基準にするならば、こうした霊界の宗教は、宗教とは言えなくなります。霊界には宗教はない、ということになってしまいます。
創造主である神は、人間が正しく生きていくために「摂理(法則)」を設けました。人間は神によって、永遠に霊的成長をする存在として造られたのです。そのため「霊的成長」は人間にとっての宿命となり、地上人生だけでなく霊界人生においても最大の目的になっています。「霊的成長」は、神が造った摂理にそって歩むことで達成されます。摂理の中で最も重要なものが「利他性の摂理」です。人間は利他的な行為を通して霊的成長がなされるように造られているのです。
霊界には、たった一つの宗教しかありません。すべての霊界人が唯一の宗教を受け入れ、熱心に信仰生活を送っています。その霊界における信仰とは――「利他性の摂理を実践し、霊的成長をすること」です。利他愛の実践こそが、信仰なのです。霊界ではすべての人間(霊)が、日々、利他愛の実践に励んでいます。霊界の宗教では、地上の宗教のように教会に足を運ぶ必要はありません。儀式を忠実に守ったり布教活動に携わる必要もありません。霊界での宗教とは、日常生活における「利他愛の実践」以外にはないのです。利他愛という大霊の摂理を実践すること、利他的な日常生活を送ることがそのまま宗教であり、信仰なのです。
歴史的使命を終え、消滅する運命にある地上の宗教
霊界の宗教に比べると、地上の宗教がいかに次元の低いものであるかが分かります。地上の宗教の教えには、ほとんど真理が含まれていません。地上世界の宗教は、霊的事実が全く分からない「霊的無知」な地上人が、想像力によってつくり出した人工的な宗教なのです。そうした宗教が地上人類を真の幸福に導けなかったのは当然です。あまりにも未熟で幼稚な宗教が紛争や戦争の元凶となって、人々を“悲劇”の中に追いやってきたのです。
こう言うと、「これまで地上の宗教は人々の拠りどころとなり、役に立ってきた」と反論する方がいらっしゃるかもしれません。たしかに地上の宗教も部分的な救いを人類にもたらし、人々の心の支えになってきました。しかし「霊的観点」から見るならば、地上の宗教が人類を真の幸福に導いてきたとは、とうてい言えません。地球上の宗教は、すでに歴史的使命を終えています。スピリチュアリズムによってもたらされた「本物の教え(霊的真理)」が普及するにともない、地球上の宗教は自動的に地上世界から消滅する運命にあるのです。