マイヤースの通信

永遠の大道(全訳)

『永遠の大道(全訳)』表紙

紙版
原書 The Road to Immortality
著者 ジェラルディン・カミンズ(著)
近藤千雄(訳)
発行日 1997年8月5日 初版発行
ページ数 271ページ
ISBN 978-4-905275-05-3
価格 1,880円(税込)
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内容紹介

生前にスピリチュアリストであり科学者であったマイヤースが、他界してあの世から送ってきた内容はきわめて学究的で高次の問題に言及しています。その中でも特に、彼によって初めて明らかにされた“類魂”(グループソウル)の事実は、スピリチュアリズム研究に大きな発展を促しました。これまで日本では、浅野和三郎による抄訳が知られていますが、近藤千雄氏による全訳が完成しました。スピリチュアリズム思想研究における必読の一書。

目次

  • ……オリバー・ロッジ
  • 通信が入手されるまでの経緯 ……E.B.ギブス
  • 第1部死後の世界の実在
    • 1章永遠の謎――“なぜ?”
    • 2章死後の界層
    • 3章夢幻界
    • 4章意識
    • 5章色彩界――第四界
    • 6章類魂
    • 7章光焔界――第五界
    • 8章光明界――第六界
    • 9章超越界――第七界
    • 10章宇宙
    • 11章エイドスの世界から
    • 12章死の真相
    • 13章霊性の進化
  • 第2部人間の精神的機能
    • 1章自由意志
    • 2章記憶――人体の内と外
    • 3章人類共通の記憶の層
    • 4章注意――人間の場合と霊の場合
    • 5章潜在的自我
    • 6章睡眠
    • 7章テレパシー
    • 8章霊的交信の原理
    • 9章幸福とは――普通一般の男女の立場に立って
    • 10章神は愛より大なり
  • 第3部十字通信の実験記録と総括
    • (1)レナードとカミンズによる実験記録
    • (2)総 括
  • 付録

「序……オリバー・ロッジ」より

霊媒のジェラルディン・カミンズ女史は自動書記の能力で著名な方である。自動書記というのは、通常の意識を引っ込めてトランス状態になると別の人格がその身体機能をコントロールして、本人のまったく知らない内容の文章(通信)を綴る現象である。

私がこの現象を初めて目の当たりにしたのは、パイパー夫人訳注――このロッジ博士を始め当時の第一級の英米の科学者が調査・研究の対象とした霊媒で、研究に携わった者は一人の例外もなく死後の個性の存続を信じるに至っている)を霊媒として開かれた実験会において、私自身が司会役をした時だった。

このカミンズ女史による実験会で司会役をつとめたのは女史の友人のギブス女史で、アイルランドに住んでおられるカミンズ女史は、イギリスに来ると必ず女史の家に逗留されるという。

さて、そのカミンズ女史を通して通信を送ってくる霊の中に、最近、私の友人だったフレデリック・マイヤースと名のる霊からのものがあるという。ギブス女史もカミンズ女史も、生前のマイヤースとは一面識もなく、名前すらご存知ない。が、その通信の内容にお二人は、プライベートな通信の域を超えた重大なものを感じるという。

その中で私との友人関係が言及されているので、ギプス女史は私にその一部を送付し、この通信者はマイヤース氏に間違いないかどうかを鑑定してほしいとの手紙が添えてあった。

検討の結果、私は多くの点でフレデリック・マイヤースの特徴が歴然と見られると断定した。例えば類魂説は彼が生前から主張し、私と議論し合ったものと多くの点で合致している。また潜在的自我や再生説に関する部分も同様で、地上時代の彼が主張していたものと“同一”と断定するに十分な類似点が見られる。

一方、全体的に見て、述べられていることに理解に苦しむところや表面上の混乱も見られるし、本人も認めている通り必ずしも絶対的に正しいとは言えない説もある。が、それはそれなりに彼らしい知性のひらめきがあり、正しく理解すれば意義ある内容を含んでいることは確かである。

真相を確かめるために私は、それまで何度も出席しているオズボン・レナード女史訳注――パイパー夫人より少し後輩の同じく霊言霊媒で、ロッジを始めとする多くの学者や科学者の研究対象にされた。フィーダと名のる若い女性の霊が取り次ぐのが特徴だった)による交霊会に出席して、すでに他界している私の息子のレーモンドを呼び出し、今回のマイヤースとカミンズ女史との関係について質してみた。

すると、確かにマイヤースはカミンズ女史を通して通信を送っており、大体において用意しておいた通信を届けることができたが、正直言ってかなり手こずり、内容的には必ずしも全てが正確とは言えない――まずまずの出来ではないかと思う、ということだった。

その中で私は死後の世界の中でも“サマーランド”と呼ばれている第三界を彼が、“夢幻界”と呼んでいることについて、本当に夢まぼろしのような世界なのかと質してみた。と言うのは、そこに住んでいる霊からの通信のどれを読んでも、驚くほど地上界と似ており、花もあれば樹木も繁り、家並も地上そっくりで、しかも欲しいものは何でも手に入るということは知っていたが、それが今一つ奇異に感じられていたからである。

主としてレーモンドを通して伝えられたマイヤースの回答を総合すると、そうした地上そっくりの環境は他界してきたばかりの人間(の霊)にとってはごく自然で親しみやすく感じられ、またそう感じられるように意図的にこしらえられている――あくまで一時的なものであるが、同じ意味において地上環境も一時的なもので、物質界の実相は人間が実際に見、あるいは感じているのとは違う、ということだった。

確かに、知友の天文物理学者アーサー・エディントンは我々の環境についても同じことが言えることを強調している。例えばテーブル一つを取り上げても、我々は固くて実質があって、いつまでも存在するかに思っているが、科学的に分析してみると、不規則に回転する電子の集団から構成されていて、しかもその電子と電子との間には莫大な空間がある――何気なく床の上に立っている時でも我々は両足の下から原子による無数の衝撃を受けている、と言うのである。

普段の感覚では我々はそうとは気づかないが、それは肉体という粗野な物質でできた感覚器官が固いと感じ、じっと立っているつもりになるように出来あがっているからなのである。我々は生まれてこの方ずっとそういう感覚に慣れてきていて、すっかり存在の一部となり切っている。だから、肉体を失ったあとも同じ感覚で環境を受け止め、急激な変化によるショックが和らげられている。

おまけに記憶や性格や愛情だけでなく物事の理解力もそのまま携えて行くので、死後の環境が少しも奇異に感じられず、地上時代の感覚がたとえ錯覚であろうと、死後の世界についても同じ錯覚が継続しているのである。従ってマイヤースのいう第三界(夢幻界)の住民がその環境を、我々が地上の環境を夢まぼろしとは思わないのと同じように、少しも夢まぼろしとは思わないのは当然なのである。その界層から少しずつ波動の高い界層へ行けば、地上界を含めた第三界までが影のようなはかない存在であることを悟っていくが、少なくとも地上を去って霊界入りする者は一気に実在の海に投げ込まれるのではないことは確かのようである。

夢幻界に続く第四、第五、第六そして第七界の叙述はすばらしいの一語に尽きるが、生前のマイヤースを知る私には、彼がその後の霊界での調査でこの程度のことを学んだであろうことは容易に納得がいく。そう確信して本書に私が“序文”を寄せることを申し出たら、よろこんで了解してくれた。その辺のいきさつをレナード夫人による交霊会の記録から抜粋して紹介しておくのが妥当と思うので、それを最後に紹介しておく。

これは私が息子のレーモンドが取り次いで語ってくれたことをそのまま書き留めたもので、終わりごろにはレナード夫人のパワーが弱ってきたので、急いで簡略に書いたことを断っておく。レーモンドはマイヤースのことを、親しみがあったせいか、“フレッドおじさん”と呼んでいる。


〈一九三二年三月十一日、レナード夫人宅にて。二時間に及ぶ交霊会の終わり近くになって――

ロッジ「レーモンド、マイヤースさんがカミンズさんを通じて通信を送ってきているみたいなんだけど、その中でレーモンドのいる世界もまぼろしの世界だと言っている。本当だろうか。それに間違いないのかな?」

レーモンド「本当です。フレッドおじさんがあの方を通して通信を送っているのは本当です。フレッドおじさんも今ここへ来ています。ボクが代わってそのことについてお話します。間違ったらおじさんがストップをかけるでしょう。今のところおじさんと(波動的に)うまくつながっています。父さん、こちらでは“条件”と“もの”をこしらえないといけないんです。一時的に、です。心霊現象で物質化現象というのがあるけど、あれと同じ意味での一種の錯覚です。そちら(地上界)でも物的と思っているのは一時的なものです。見た目にも、手で触れてみても、つまり外見上は至って自然です。このからだ(と言ってロッジの身体に触れる)も五感にしっくりきます。実質的にはこちらの世界でもまったく同じで、家や衣服などの“もの”を、魂にしっくりくるような暮らしや仕事ができるように、こしらえるのです。一時的なものです。つまり意思表示の媒体なのです。地上の家や書斎、その他なんでもそうです。それに慣れ切っているから、同じ環境の方が居心地がいいだけです。つまり全てが錯覚なんだけど、今の段階ではそういう環境が必要なのです」

ロッジ「つまりレーモンドは夢幻界で暮らしているわけだ」

レーモンド「父さんだってそうですよ。文字通り“まぼろし”の中で生きているようなものです。ボクたちはそちらの夢幻の世界の延長の中で暮らしていると言ってもいいのです。ずっと先端の方かな。夢幻の世界の終わりで、実在界のすぐ近くまで来ています。実在については地上の人間より遥かに実感をもってその存在を知ることができます。

父さん、霊的宇宙は実在の世界ですよ。霊も精神(意思)も常に実在の世界につながっているんです。それ以外のもの、つまり外部にまとっているものは、ある意味では当分のあいだ必要ですが、不滅の実在の観点から見るかぎり鈍重すぎるし、ホンの一時的なものです。ボクは霊的存在になったといっても、まだ物的世界から完全に抜けきったわけではありません。依存の度合が減ったというだけで、まだつながりはあります」

ロッジ「そっちの世界も物質的なものがあるわけだ」

レーモンド「そうですよ、父さん。物質的ですよ。フレッドおじさんもいつもそう言ってます」

ロッジ「エーテルと呼んではいけないかな?」

レーモンド「そうだなぁ、これは難しい用語ですね。エーテル界はまだほとんど探求されていません。エーテル界の内側にエーテル界があり、そのまた内側にもエーテル界があるというふうに、無数にあるんです。でも、どこまで行っても精神が主役である点は同じです」

ロッジ「精神の作用で全てが営まれていると父さんは信じるね」

レーモンド「そうです、万事が精神の作用です。魂の発達に必要なものであれば幻影でもこしらえることができます。この魂のことを忘れてはいけません。魂こそが自分です、本当の自分です。父さん、しくじるのも、楯突くのも、愛するのも、憎むのも、良いことをするのも悪いことをするのも、みな魂なのです。(普遍的な霊の一部である)霊は善悪を超越した存在ですが、魂はその霊(自我)が自分を表現するための媒体として環境や道具立てが必要なのです。そこで精神がそれをこしらえるのです。訳注――自分でこしらえるのではなく、その道の専門の霊団がいることをマィヤース自身が本文で述べている)それで錯覚とかまぼろしという誤解の多い用語を、霊界についても地上界についても用いざるを得ないのです」

ロッジ「すると、周りにあるもの全てが精神でこしらえられてるわけだ?」

レーモンド「そうですよ、父さん。もちろん人間の精神ではありませんよ。大建築家(創造主)の精神です。ボクたちだってそれぞれに建築家ですけどね。大建築家がエーテルの世界をこしらえ、さらに物質の世界もこしらえたのです。霊はそのエーテルと切り離すことはできません」

ロッジ「エーテルは霊にとって不可欠なんだね?」

レーモンド「両者が切り離された存在は考えられません。今フレッドおじさんにも尋ねてみましたが、別々の存在は考えられないとおっしゃってます。エーテル界は実在界に所属するものだそうです。もちろん宇宙に遍在しており、地上界もその中に存在しています。生命のあるところには必ずエーテルがあります」

ロッジ「生命の媒体というわけだ」

レーモンド「そうです、フレッドおじさんもそういう言い方をしています――生命の媒体です。地上の人間がこうした事実を理解できるようになれば、大半の人間が恐れている死が訪れた時に、どこだか知れない怖い所へ放り込まれるのではないことが分かります。知らないから怖いのです。でも、知っている世界ではないのではないか――そうおっしゃる方がいるかも知れません。確かに知らない世界です。ですけど、よく似通った世界です。

自然界もそうですよ、父さん。自然界のものは本質的には物質界に所属していますが、それがこちらの世界にもあるのです。花もあります。樹木もあります。

地上の人間は大体において本能で生きています。こちらでは知性で生きています。盲目的な本能ではありません。植物や動物はそれこそ本能だけで生きていると言っていいでしょう。それが知性で生きる生命体とつながった時、つまり精神で自分の行為を規制し支配するようになった時、個的存在として死後の存続の資格ができたことになるのです」

ロッジ「インディビジュアリティ(個性)を獲得するわけだ」

レーモンド「その通りです、父さん。その辺に明確な一線が画されているのです。と言って本能がつまらぬものと言うつもりはありません。大きな自然の機構の中にあって、それなりの役目があると言っているまでです。地上でも本能によって立派なことが沢山行われています。

でも今日はいろいろ話ができて楽しかったですよ、父さん。フレッドおじさんともね。ボクを通してだけど……

ロッジ「今日はカミンズ女史にお会いする予定です。フレッド、君は五界、六界、七界のことまで述べてましたね?」

マイヤース「ええ、述べました。大体において私の言いたいことは伝わったようです。現在のところではアレが精一杯です」

ロッジ「“序”を書くように頼まれているんだけど……

マイヤース「お願いします。ぜひ書いて下さいよ」

(このあと気さくな別れ言葉を交わした。そして交霊が途切れた)


こうして(カミンズ女史でなく)別の霊媒を通しての証言を得て私は、本書が間違いなく死後の生命と真面目な人間がたどる界層についての本格的な通信であると確信して、自信をもって推薦するものである。“真面目な人間がたどる界層”と言ったのは、不真面目な人間、善意に欠ける人間がたどる界層もあるに違いないからである。

しかし人間の体験には限りがあるから、まったく体験のない世界のことについての情報を伝えるのは極めて困難であろう。また実際に体験したことでも、その解釈の仕方に問違いがないとは言えないであろう。

そうした要素も考慮した上で私は、本書がしっかりとした教養と献身的な奉仕精神と一点の曇りもない正直さにあふれた霊媒を通して、ほぼ真実に近い死後の実情を伝えんとした試みであることを信じて疑わない。

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