2010年、新春を迎えて

ニューズレター第48号

新年、明けましておめでとうございます。昨年の日本の大きな出来事の一つは、政権交代が実現したことです。長期の自民党政権に代わって民主党政権となり、政治変革への国民の期待が高まりました。しかし、その新政権は半年もしないうちに内部から矛盾が噴出し、すでに行き詰まりの様相を呈するようになっています。

政治では根本的な改革はできない

政治は、しばしば人々を熱狂させます。「労働党だ、保守党だ」(英国)、「民主党だ、共和党だ」(米国)、「自民党だ、民主党だ」(日本) と、政治家・大衆を巻き込んだ激しい議論と争いを引き起こします。大半の人間が、政治によって人間の幸福が左右されるようになると思い込んでいます。しかし人間の真の幸福は、そうした政治的な営みから実現するものではありません。

シルバーバーチは――「どの政党が政権を握ろうとも、明日のことで思いわずらってはなりません」と述べ、現在の地球上の政治には期待が持てないことを断言しています。時には政治を通じて物質次元における表面的で部分的な変革が実現することはありますが、時間とともに次々と新たな問題が発生し、いつまでたっても真の幸福にはたどり着けません。

地球上の政治が無力なのは、国家や社会・人間が「物質主義」と「利己主義」に支配され、それらの上に政治システムが築かれているからです。霊的真理として示される「神の摂理(法則)」が人類の共通理念となり、それが政治に移されないかぎり、地球上に真の幸福が到来することはありません。「霊的真理」が地球上の常識とならないかぎり、さまざまな悲劇を地球上から消滅させることは不可能なのです。

いずれの政党が政権をとっても、大局的には国家の運命に大差はありません。私たちスピリチュアリストは、スピリチュアリズムこそが最高次元の「政治改革運動」であることを自覚して、真理普及に邁進しなければなりません。現時点では、政治に対して、政党や政治家個人を支持するということではなく“個々の政策”について、それがより「神の摂理(霊主肉従・利他愛)」に近いかどうかで評価を下すようにすべきです。政策内容を、霊的観点から冷静に論じるようにすべきです。

借金体質が、さらなる経済的困難をもたらす

昨年末に、政府は日本経済がデフレ状態に入ったことを表明しました。日本経済はデフレ・円高のダブルパンチに加え、ドバイのバブル崩壊という世界規模の悪影響を受け、瀕死ひんし状態に陥ろうとしています。今や世界恐慌がいつ勃発ぼっぱつしてもおかしくないような危機的状況にあります。“国家破産”が、いよいよ現実のものになるかもしれません。日本国家は毎年、国家収入(税収)と同じだけ(今年はそれ以上)の借金をして、将来に莫大なツケをまわし続けています。こうした財政運営は誰が考えても常識外れ・狂気というべきもので、いつか必ず大きな痛みをもって埋め合わせをしなければならなくなります。

しかし政府も政治家も、この問題の深刻さを国民に訴えることもせず、問題解決に全力を挙げて乗り出そうとしていません。政治家や政党は、自分が選挙に当選することや政権維持のことしか考えず、日本国家の没落に歯止めをかけようと真剣に取り組んではいません。

政府と政治家の本来の使命とは

政府も政治家も、未来の国家と国民のことを考えるなら、国民が“物欲追求”に奔走することに警鐘けいしょうを鳴らし、毅然きぜんとして対策を講じなければなりません。人間は肉体を持っているため、すぐに物欲や肉体的快楽の追求に走ってしまいます。民主主義の世の中ではそうした欲望を叶えてくれる政治家が選ばれ、“衆愚政治”がいとも簡単に出現してしまいます。

本当に国家と国民の将来を考えるなら、政府や政治家は、たとえそれが国民の嫌がることであっても勇気を持って断行しなければなりません。国民を「霊主肉従」に導くことが、政府と政治家のなすべき最大の仕事であり、本来の使命なのです。

国民の嫌がることを断行してこそ“真の政治家”

政府と政治家と国民が、金儲け(経済発展)と物質的喜びだけを求めるなら、その国家の精神状況は頽廃し、確実に衰退の道をたどることになってしまいます。民主党政権になっても“借金体質”は何ひとつ変わっていません。事業仕分けといったようなパフォーマンスでわずかばかりの無駄を省いても、国家の借金体質という根本問題の解決には、ほとんど役には立っていません。つもり積もった借金自体を減らす、ということでなければならないのです。

急激な経済発展を望めない現状にあって借金を減らしていく現実的方法は、大胆な歳出カットの敢行と、大幅な増税(消費税の大幅引き上げ)以外にはありません。それができなければ、国家破産にともなう“ハイパーインフレ”によって国民の財産を犠牲にして、国家の借金をチャラにするしかないのです。

たとえどれほど苦しい事態に直面することになるとしても、将来の国家と子孫のために私たちは今、困難に立ち向かわなければなりません。生活水準を下げても国家の経済的困難を耐え忍ばなければならないのです。どうしても助けが必要な弱者(身寄りのない年寄り・病人・障害者など)には国家は手を差し伸べなければなりませんが、それと同時に国民全体が質素な生活を送り、歯を食いしばって難局を乗り越えていかなければならないのです。政治家は、それを率先して実行すべき立場にあるのです。

経済的困難は、霊的進歩のチャンス

今後、日本はさらに厳しい経済状況へと追い込まれていくことになります。政府には打つ手がなくなり、多くの日本人が経済的困難を悲劇と考え、悲嘆にくれることになるでしょう。これから日本を襲うことになる経済不況は、経済収縮を引き起こし、国民の生活レベルを引き下げ、貧困を拡大させ、犯罪を蔓延させて社会不安を増大させることになるでしょう。多くの人々が、今とは比較ならないような絶望のふちに立たされることになります。

しかしそうした国家の大ピンチは、霊的視点から見るなら霊的飛躍のための“大きなチャンス”となります。物質的・経済的な破綻はたんによってどん底の状況に置かれた人間は、否応なく精神世界・霊的世界に意識を向けるようになっていきます。病人が死を前にして意識を自己の内面に向けるようになるのと同じことが、国家レベルで発生するようになるのです。その意味で経済破綻・生活水準の低下・貧困拡大は、国家にとって決してマイナスとは言えません。

モノ・カネ中心の国家から、精神中心の国家へ

現在の地球上のすべての国家は、「経済至上主義・物質至上主義・物質的価値観」に支配されています。いずれの国家も経済的な成長を最優先し、経済大国を目指しています。国家も国民も経済的に豊かになることを幸福と思い込み、上から下に至るまで物欲に翻弄ほんろうされて「肉主霊従」の道をひた走りに走っています。そうしたモノとカネを優先する世界では、経済不況・不景気は最大の不幸・悪であり、最も恐れる出来事となります。

これまでの日本もそうした考え方に支配されてきましたが、今後はそこから一歩抜け出して、より高次の精神国家を目指さなければなりません。地球人類はトータル的に見ると、徐々に霊的進化の道をたどっていくことになります。国家もそれと並行して、少しずつ進歩していくようになります。何百年、何千年という期間をかけて、モノ・カネ中心の国家から精神中心の国家へ、そして霊性中心の国家へと進化していくようになるのです。

経済不況が辛いといっても、それはどこまでも物質次元における苦しみにすぎません。極貧という物質的な地獄の中にあっても、精神と魂は天国に住むことができます。本当の意味での国家の不幸とは、マイナスの経済成長のことではなく、国家・政府・国民が物欲に翻弄され、それ以外に意識が向かないことなのです。物欲一色の“拝金主義”に覆われたかつての高度経済成長期の日本や、現在の中国こそが不幸な国家なのです。

より高次の「霊的国家」を目指して

今後日本は、経済大国の位置を保ち続けることはできなくなっていきます。経済大国の立場は、経済発展途上国に譲り渡すことになります。そして日本は、そうした国々より一歩先を歩むことになるのです。経済中心から文化・精神中心へ、さらに霊性中心へと国家も進化していきます。今日本は、経済発展の次の段階にさしかかっています。これまでのような経済大国という時代遅れのレベルにとどまり続ける必要はありません。少子化の進行は自然の成り行きであり、それとともに人口は減少して国家の経済規模も西欧諸国並みになっていくことでしょう。

日本は経済大国を卒業して、より次元の高い「精神的・霊的国家」を目指していかなければなりません。国家規模としては小さくても、高い精神性を持った「霊的真理」に一番近い国家・国民を目指していくべきなのです。それが実現するなら、日本はかつて経済大国として持っていた物質的影響力を、精神的影響力・霊的影響力に代えて世界人類に及ぼすことができるようになります。そしてより次元の高い貢献の道が開かれていくようになるのです。

こうしたプロセスの中で決定的な鍵を握っているのが、言うまでもなく“スピリチュアリズム”です。日本は「スピリチュアリズム大国」となることによって、将来の地球上においてきわめて重要な役割を果たしていくことになります。私たちスピリチュアリストには、そうした国家の命運を左右する重大な使命が与えられているのです。

本年も霊界の大軍団の道具として、皆様方とともにスピリチュアリズムの発展と世界人類への奉仕のために歩んでいきたいと心から願っています。

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