スピリチュアリズムにおける心霊現象の位置づけと、心霊現象の推移
ニューズレター第46号
スピリチュアリズムは、世間一般には心霊現象や交霊会の類と思われています。しかしスピリチュアリズムの本質を理解すると、スピリチュアリズム=心霊現象=交霊会=心霊研究という認識は、あまりにも的外れであることが分かります。ここではスピリチュアリズムの中で「心霊現象」が、どのように位置づけされているのかを見ていきます。
スピリチュアリズムでは多種多様の心霊現象が発生しましたが、それは偶然的に生じたものではありません。スピリチュアリズムにおける心霊現象は、どこまでも霊界の計画に基づいて起こされたものなのです。スピリチュアリズムの心霊現象には明確な計画性があります。心霊現象の秩序立った歴史は、霊界の高級霊の意図を反映したものなのです。今号では以上のような観点から、スピリチュアリズムの心霊現象について取り上げます。
内容は次のようになっています。
【1】スピリチュアリズムにおける心霊現象の位置づけ
――心霊現象は、どこまでも霊的真理・霊的教訓の前座
地球人類は19世紀の近代スピリチュアリズムの登場をもって、大きな霊的転換期を迎えることになりました。人類の思想史上、あるいは人類の神秘主義思想上、最も重要な転換点が1848年の近代スピリチュアリズムの勃興でした。
近代スピリチュアリズムは、一般には「心霊現象の研究(心霊研究)」として知られています。当時の一流の科学者たちによって、それまで宗教の専門領域とされてきた心霊現象・神秘現象に対して、本格的に科学のメスが入れられることになりました。詳しい経過については別の機会に譲りますが、この一連の動きがあまりにも際立っていたため、近代スピリチュアリズムとは心霊研究のことである、とのイメージが社会一般に定着してしまいました。
しかし、これはスピリチュアリズムの初期における、きわめて限定された部分的な出来事です。当時の西欧世界を巻き込んだ心霊研究は、その後のスピリチュアリズムの普及・展開のために、霊界から計画的に引き起こされた序奏にすぎませんでした。心霊現象を演出して、スピリチュアリズムの思想の基礎となる「霊魂説」の正当性を明らかにすることが、その目的だったのです。
驚異的な心霊現象は、すべて霊界側から計画的に演出されたもの
初期スピリチュアリズムを理解するうえで一番重要な点は、当時ひんぱんに引き起こされた心霊現象は、すべて霊界から計画的にもたらされたものである、ということです。スピリチュアリズムの初期に演出された驚異的な心霊現象は、スピリチュアリズム普及計画の一環として、すべて霊界側から展開されました。地球人類に「霊的真理・霊的教訓」を受け入れさせるための準備段階として、用意周到に仕組まれたものだったのです。
スピリチュアリズムの心霊現象は、霊能力を持った特定の人間によって偶然に発生するようになったものではありません。霊界サイドの徹底した計画のもとで、演出されたものなのです。この点においてスピリチュアリズムの心霊現象は、世間一般に見られる心霊現象とは根本的に違っています。また歴史上に現れた他の宗教における心霊現象とも、その存在意義が本質的に異なっています。
初期スピリチュアリズムを理解するうえで一番重要な点は、当時ひんぱんに引き起こされた心霊現象は、すべて霊界から計画的にもたらされたものである、ということです。スピリチュアリズムの初期に演出された驚異的な心霊現象は、スピリチュアリズム普及計画の一環として、すべて霊界側から展開されました。地球人類に「霊的真理・霊的教訓」を受け入れさせるための準備段階として、用意周到に仕組まれたものだったのです。
スピリチュアリズムの心霊現象は、霊能力を持った特定の人間によって偶然に発生するようになったものではありません。霊界サイドの徹底した計画のもとで、演出されたものなのです。この点においてスピリチュアリズムの心霊現象は、世間一般に見られる心霊現象とは根本的に違っています。また歴史上に現れた他の宗教における心霊現象とも、その存在意義が本質的に異なっています。
仕方なく演出された心霊現象
では、スピリチュアリズムの初期に心霊現象を演出した霊界側の真の意図は、どこにあったのでしょうか。実は人類史上、類を見ないような数々の驚異的な心霊現象は、霊界人が心の底から喜んで起こしたものではなかったのです。本当は霊界人は、心霊現象などではなく、初めから高次元の霊的知識・霊的教訓を与えたいと思っていたのです。しかし当時の地上人の霊性はあまりにも低すぎて、霊的知識・霊的教訓がもたらされたとしても、それを正しく受け入れられるような状況にはありませんでした。せっかく霊的真理が与えられても、その重要性を理解することができる人は、ほとんどいなかったのです。
そこで霊界側は仕方なく、心霊現象という派手な演出をすることにしました。「物理的心霊現象」という華々しいデモンストレーションを行うことによって、まず人々の関心を「霊魂」に向けさせようとしたのです。
そうした霊界サイドの本音を、シルバーバーチは次のように述べています。
「物質界の人間も本来は霊的存在です。その人間に霊的摂理を教えるためにラップなどの物理的心霊現象から始めなくてはならなくなったことを残念に思います。それほど現代の人間が物的感覚に浸り切り、霊性がマヒしているということです。(中略)霊的波動に鈍感になってしまった人類は、物的なものにしか反応しなくなっています。」
「私が残念に思うのは、本来が霊的存在であるはずの人間が、あまりに霊的なことから遠ざかり、霊的法則の存在を得心していただくためには、私たちスピリットがテーブルを浮揚させたりコツコツと叩いてやらねばならなくなったことです。」
ここにはスピリチュアリズムを心霊現象や交霊会とのみ思っている人々にとって、実に驚くべき霊界人の真意が示されています。シルバーバーチはまた、次のようにも述べています。
「私たちは物的外皮の下に埋もれている永遠の実在を見出させてあげようと努力しているのです。それを、できることなら霊的な方法で行いたいのです。すなわち強烈なインスピレーションに触れさせるとか魂の琴線に触れさせるという形の方が望ましいのです。また、そう努力してみました。が、その方法では、反応を見せる人間は情けないほど少ないのです。
それに引きかえ、テーブルを動かすとか叩音を出すとか、メガホンを部屋中を飛び回らせるとかの現象をお見せすると、皆さんは“すごい!”とおっしゃいます。そのとき私たちは内心“何をくだらないことを!”と思っているのです。音を出してみせることの方が魂を感動させることより大切なのでしょうか。」
スピリチュアリズムの初期に現出した驚異的な心霊現象は、当時の人々の心を惹きつけ、科学者を圧倒することに成功しました。しかし霊界側としては、本当はそんなことはしたくなかったのです。地上人の霊性の低さに合わせて、やむをえず相応しい働きかけをしたということなのです。
シルバーバーチの言葉は、そうした霊界側の思いを端的に示しています。演出された心霊現象は、人々にとっては驚異的なものでしたが、霊界の高級霊にとっては取るに足りないものでした。地球人類の霊性があまりに低かったために、仕方なくやってみせたことだったのです。
心霊現象演出の真の目的
――「霊魂説の証明」と「霊界通信の準備」
地球人類の霊的啓発と霊的救いというスピリチュアリズムの大目的は、霊的真理の普及によって達成されていきます。霊的真理が多くの人々に受け入れられ、実践されるようになるにともない、人類全体の霊性は向上していきます。しかし今述べたように地球人類にとって、心霊現象なしで初めから霊的真理を受け入れるということは不可能でした。
霊的真理を受け入れるためには、それに先立って霊魂の存在を認めなければなりません。「霊魂説」は霊的真理の最も基本ですから、人々が霊的真理の全体を理解するためには、まず「霊魂説」を受容することがどうしても必要になります。「人間は死んでも消滅することはない。霊として霊界で生き続ける」「霊界は、我々が住んでいる物質世界に重複して存在している。同じ場所に次元を異にして存在している」「霊界に住む霊から、絶えず地上人に向けて働きかけがなされている。その働きかけによって心霊現象が引き起こされる」――こうした基本的な霊的真理、すなわち「霊魂説」を証明するために、霊界側は心霊現象を演出したのです。地上側に「霊魂説」を受け入れる状況が整ったとき、初めて次の段階として高次元の「霊的真理・霊的教訓」を、霊界通信を通して与えることができるようになるのです。
霊界側の意図は、どこまでも霊界通信によって高度な霊的情報・霊的知識を地上人にもたらすことにありました。したがって霊界からすれば、種々の心霊現象の中で最も重要なものは、霊からのメッセージを伝える「霊界通信」ということになります。霊界側は、霊界通信というメッセージ伝達の手段を確保するために目を見張るような心霊現象を演出してきたのです。それによって「霊魂説」を立証し、霊魂(霊)の存在とその霊からメッセージが届けられる可能性があることを人々に示してきました。それが初期スピリチュアリズムにおける心霊現象演出の、すべての目的だったのです。
心霊現象は、霊的真理・霊的教訓の前座にすぎない
霊界の高級霊たちは、驚異的な心霊現象を通して地上人に霊魂の存在を認めさせ、霊魂説の正当性を証明してきました。そして霊界通信によって「霊的真理・霊的教訓」をもたらす準備を着々と進めてきました。スピリチュアリズムの初期における物理的心霊現象の演出は、霊的真理・霊的教訓を最終目的としていました。言い換えれば――「あらゆる心霊現象は霊的真理・霊的教訓をもたらすための前座として演出されてきた」ということなのです。
そうした霊界側の意図を、インペレーター霊は次のように述べています。
「心霊現象は単に人間の目を見張らせ、面白がらせるためのものではない。肝心の目的は霊的教訓にある。」
*『霊訓』については翻訳原文の文体・表現を改めています。
「(我々は)現象そのものを目標としているのではない。目標は一段高い次元にある。」
「心霊現象は、あくまでも(霊の実在についての)確信を得させるための手段にすぎないものと心得よ。その一つ一つを霊の世界より物質の世界への働きかけの証と受けとめよ。それだけのものにすぎないと理解し、それを霊的神殿を建立するための基礎として活用せよ。現象はどういじくってみたところで、それ以上の価値は出てこない。(中略)あくまでも現象を基礎として、そこから一歩踏み出さなければならない。現象に携わる知的存在の本性はいったい何であるのか、どこから来るのか、その意図は、等々を知ろうとしなければならない。(中略)
あなたが首尾よく現象的なものを超えて真理のための真理探究にまで進めば――要するに我々の意図を信じてくれれば――その暁には、いまだあなたが知らずにいる世界に案内することができるであろう。」
「心霊実験にまつわる危険性について警告し、物理現象はいち早く卒業して霊的知識へと進むよう忠告しようとしているまでである。進歩には受け入れ態勢が先行しなければならない。が、我々としては、あなたが少しでも早く物的束縛より脱け出て、ひたすら霊的真理の追究に専心する日の到来を望み祈る気持でいる。」
「現在の段階は、あくまで通過すべき段階でなければならない。我々の仕事にも物理現象は付随する。が、それは真の目的ではない。我々が期待している真の発展の地ならし程度でなければならない。」
心霊現象は霊的な“オモチャ”
スピリチュアリズムにおける心霊現象の存在意義は、「霊的真理・霊的教訓の前座」という言葉に言い尽くされますが、それと同じことを、シルバーバーチは“オモチャ”の譬えで説明しています。心霊現象が霊的真理の前座であることを、オモチャになぞらえています。
「いつの時代にも“オモチャ”を必要とする人がいるものです。見かけは立派な大人でも、霊的には子供なのです。もっと素晴らしいもの(霊的真理)があることに気づくまでは、オモチャのような幼稚なもので満足なのです。とはいえ、何の関心も持たないよりは、たとえ低次元のもの(心霊現象)であっても、“霊”に関わるものに関心を持つ方が上でしょう。」
「霊的真理は、霊的意識の芽生えていない人にはなかなか理解してもらえません。そこで現象的なものが必要となるのです。しかし、いったん現象に得心がいったら、それをオモチャのようにいつまでも玩んでいてはいけません。霊的な意義を考える生活へと切り換えないといけません。」
心霊現象が霊的世界への関心を喚起するなら決して無駄とは言えませんが、いつまでも現象だけにとらわれ続けていると、間違いを犯すことになります。シルバーバーチは――「交霊会で死者と交わることによって死後の生命の存続を確信し、死別の悲しみが癒されるなら交霊会には意味があることになりますが、いつまでも死者との私的な交流にとらわれていてはいけません。それでは単なるエゴ的行為になってしまいます」と明言しています。
いつまでも心霊現象にこだわるのは、霊界人の誠意を裏切る愚かな行為
21世紀の現在は、すでに霊的真理の実践を中心とする新しいスピリチュアリズム(ハイレベル・スピリチュアリズム)の段階に入っています。そうした時期に霊的真理を手にしながら、昔のままの心霊現象にこだわり続けるというようなことがあってはなりません。いつまでも死者との私的な交流を求めていてはならないのです。
心霊現象は、何も特別なものではありません。死後の世界の存在は当たり前のことであり、他界した家族や知人は霊界で幸せに暮らしています。その事実が分かった以上、地上人としてなすべきことは「霊的真理」を日常生活の中で実践し、自らの魂を引き上げることです。時代遅れの現象にこだわるのは、地球人類を救うために犠牲の道を歩んでいる霊界人の誠意を踏みにじる行為です。霊的真理の前座にすぎない心霊現象にとらわれ続けるのは、無知で愚かなことなのです。それが限度を超えれば“エゴ的行為”となってしまいます。
<ポイント整理>
- 物理的心霊現象
- →
- 霊魂説の証明・霊界通信の準備
- →
- 霊界通信
- →
- 霊的真理・霊的教訓
【2】初期スピリチュアリズム内部の霊的腐敗と堕落
――心霊現象に対する低俗な好奇心と、心霊現象を悪用するニセ霊能者
霊界サイドの真意から懸け離れたスピリチュアリズムのイメージ
スピリチュアリズムの初期に、驚異的な心霊現象・奇跡的な超常現象を目の当たりにした人々は、そのことだけに関心を向けるようになってしまいました。そして肝心な霊界側の意図(*地球人類の霊的覚醒と霊的成長)には目もくれないといった状況ができ上がってしまいました。霊界サイドの真意と誠意を理解することなく、人々は低俗な好奇心だけに走ってしまったのです。
そしてスピリチュアリズムとは心霊現象とその研究である、といったイメージが、世間に広く定着することになってしまいました。
心霊現象への好奇心とエゴ的関心
スピリチュアリズムの初期の頃から、多くの人々が派手な心霊現象に吸い寄せられ、スピリチュアリズムに関心を向けるようになりました。しかし彼らの大半が、スピリチュアリズムの真の目的を理解することはできませんでした。そして心霊現象に対する低俗な好奇心から、低次元の流行やブームをつくり出すことになりました。
そうした状況は、今日の日本をはじめとする世界中のスピリチュアリズムにも、そのまま当てはまります。欧米のスピリチュアリスト・チャーチには、好奇心から心霊現象に惹きつけられた人々が集まってきました。彼らの中には、心霊現象を利用して利益を得ようとするような人間も数多くいました。こうした霊的腐敗状況は、地球人類に霊的救いをもたらそうとする霊界の人々に、深い絶望を与えることになりました。
スピリチュアリズム本来の高い理想から逸脱し、霊的退廃状況に陥ったスピリチュアリズムの実情を前にして、ある高級霊が残念な思いを次のように述べています。
「地上は、あまりにも多くの利己的な人間であふれています。スピリチュアリストと言われる人々の中においてでさえ、そうなのです。彼らはただ、スピリチュアリズムから何か利益を得ることにしか関心がないのです。霊的真理に関心を持っているわけではありません。そのために彼らは交霊会で、世俗的で物質的な質問(自分の仕事や情事といったこと)をするのです。70パーセント以上の人々は世俗的なことにしか関心を持っていません。彼らは霊媒という特殊な人間から、そうしたことについてのメッセージや物質的な手段を聞きたがるのです。
それがこれまで、スピリチュアリズムが全世界に広まらなかった理由なのです。そして地上人の人生を変化させることができなかった理由なのです。」
心霊現象と霊的真理を悪用して大衆を騙す“ニセ霊能者”
心霊現象では、一般大衆の低俗な好奇心という問題と同時に、それを意図的に利用して詐欺を働こうとする“ニセ霊能者”の存在が常に問題となります。スピリチュアリズムは、まさにこうしたニセ霊能者との闘いの歴史と言えます。スピリチュアリズムは巷にあふれるニセ霊能者のウソを暴き、摘発してきました。スピリチュアリズムほど、ニセ霊能者やニセ心霊現象に厳しく対処し、徹底してメスを入れてきたものはないのです。
しかしニセ霊能者は、大衆の低俗な好奇心があるかぎり、消滅することはありません。ニセ霊能者にとって「心霊現象」は、手軽に人々を騙して信用させ、この世の富や名声を得るのに実に都合のいい手段なのです。この甘い汁に味を占めたニセ霊能者は、ますます悪事を重ね、泥沼から抜け出せなくなっていきます。そして現在も、心霊現象を利用して大衆の低俗な好奇心を操り、詐欺を働くニセ霊能者が闊歩しています。ニセ霊能者の詐欺の手口はますます巧妙化し、テレビや出版物などのメディアを通じて、一過性のブームや流行をつくり出しています。
現在のニセ霊能者は、心霊現象ばかりでなくスピリチュアリズムの「霊的真理」を富や名声を獲得するために悪用しています。スピリチュアリズムを利用して人々を騙し、スピリチュアリズムの権威を貶め、霊界人の献身的・犠牲的な歩みを踏みにじるニセ霊能者は、スピリチュアリズムにとって敵以外の何ものでもありません。
今後のスピリチュアリズムでは、こうしたニセ霊能者との闘いがいっそう重要性を増すことになります。それについて先に挙げた高級霊が、次のように述べています。
「霊媒者やスピリチュアリストの中には、あまりにもいい加減なことを言う者が多いのです。霊媒者のふりをしている多くのニセ霊媒者がいます。彼らは大ボラを吐き続けています。彼らによる単なる作り話にすぎないものが、霊からの通信であるとされてきました。そのため霊媒者の語るものは、本物の霊の声ではないと疑いを持つ人々を生み出しました。
われわれは、こうしたニセ霊媒者と闘いをしなければなりません。スピリチュアリストの中には、自分が霊媒者ではないのにそのように思い込んでいる人も数多くいます。残念なことにまわりの人々も、しばしば彼らを本当の霊媒者と信じてしまうことが多いのです。スピリチュアリストの中には、知性の欠如から時に大きな問題・厄介な問題を引き起こす者がいます。」
【3】スピリチュアリズムのターニングポイントと心霊現象の変化
――初期スピリチュアリズムから現代スピリチュアリズムへのレベルアップ
霊界側の計画と、 物理的心霊現象の演出の目的
これまでの話の内容から、スピリチュアリズムの心霊現象に関する背景や事情を知ることができました。その中で特に重要な点は、初期においてひんぱんに登場した物理的心霊現象は、いずれも霊界側の計画によって演出されたものであるということでした。霊界側の計画とは、地上人に霊的真理・霊的教訓を教え、霊的向上をもたらすことを最終目的としています。そしてそのための準備として演出されたのが「物理的心霊現象」だったのです。
また当時の心霊現象の演出には、近代科学を後ろ盾にして社会全体を巻き込もうとしていた“唯物論”を牽制するという別の意味もありました。その闘いの場が、英国スピリチュアリズムだったのです。唯物論は霊的世界そのものを、ひいてはあらゆる宗教を否定しようとしますが、そうした勢力が世界中に広まろうとしていました。マルクスとエンゲルスによって“共産党宣言”がなされたのと同じ1848年に“スピリチュアリズム”が勃興した事実は、霊界人の意図を端的に示しています。
物理的心霊現象は、すでに時代遅れ
20世紀に入り、それ以前(18世紀半ば~19世紀初期)とは社会状況が大きく変化しました。科学自体にも根本的な変化が訪れ、“唯物論”は主張の根拠を失い崩壊することになりました。それにともない、それまで主流であった「物理的心霊現象」は徐々に後退することになっていきました。
先進諸国では、もはや物理的心霊現象を伝道の手段とする必要はなくなりました。霊界からの導きの中で、「霊的真理」がストレートに地上人の間に普及していくような状況ができ上がっているのです。日本をはじめとする現在の先進諸国では、スピリチュアリズムの初期のような派手な心霊現象の演出は、もはや不要になっています。物理的心霊現象はスピリチュアリズムの中では、すでに時代遅れになろうとしています。
そして心霊現象の中心は、「心霊治療(スピリチュアル・ヒーリング)」や「主観的心霊現象」といった先進諸国の知性レベルに相応しいものへと移ろうとしています。地上人の内面に向けてより強く働きかけ、霊的覚醒を促すことのできるものへと変化しているのです。
心霊現象と霊界通信の二本立て展開
心霊現象の演出の目的は、「霊魂説」という基本的な霊的真理の正当性を人々に認めさせることでした。それと同時に「霊界通信」という高次の心霊現象を受け入れさせるための準備をすることでした。霊界から引き起こされた心霊現象はすべて――「霊的真理を地上にもたらし、地球上に普及させる」という目的に向けて展開されていきました。
驚異的な心霊現象の演出と並行して、霊界側は霊界通信の計画を具体的に進めていきました。その結果、イギリスでは、英国系スピリチュアリズムのバイブルと呼ばれたステイントン・モーゼスによる『霊訓』が登場することになりました。そしてフランスでは、アラン・カルデックによって『霊の書』『霊媒の書』という優れた霊界通信が世に出されました。『霊訓』と『霊の書』は、この後に登場してくる『シルバーバーチの霊訓』とともに“世界三大霊訓”と呼ばれています。
このようにスピリチュアリズムの初期には、物理的心霊現象の演出と同時に『霊訓』や『霊の書』といった高級霊界通信によって、地球人類に霊的知識・霊的教訓がもたらされることになりました。その後の霊界からの働きかけも、心霊現象と霊界通信という二本立てで進められていきました。
スピリチュアリズムのターニングポイント
世間一般には、スピリチュアリズムは第一次大戦までが“黄金期”と呼ばれていますが、それは「物理的心霊現象」と「心霊研究」という観点から見たものです。スピリチュアリズムを主導する霊界サイドからすれば、心霊現象の“黄金期”はどこまでも、その後のスピリチュアリズム計画の準備段階・初期段階にすぎません。
スピリチュアリズムは、常に霊界の計画にそって着々と進歩してきました。心霊現象を中心として見るなら、1920~30年がスピリチュアリズムの“ターニングポイント”になっていることが分かります。この時期を境として心霊現象は、物理的心霊現象から「心霊治療」や「主観的心霊現象」に中心が移っていきます。スピリチュアリズムの勃興(1848年)から心霊現象の黄金期までを「初期スピリチュアリズム」と呼び、それ以後、現在に至るまでを「現代スピリチュアリズム」と呼びます。
さて、スピリチュアリズムの勃興の当初より一般的な心霊現象と並行して進められてきた霊界通信も、20世紀初期のターニングポイント期以降には『シルバーバーチの霊訓』の登場を迎えることになりました。『シルバーバーチの霊訓』という最高の霊界通信の登場によって霊界通信自体が一段とレベルアップし、それまでとは比較にならない質的向上を遂げるようになったのです。そしてそれ以前は“英国系”と“フランス系”に分かれて発展してきた霊界通信が、さらに高次元の心霊理論によって一つに統合されることになりました。『シルバーバーチの霊訓』を通して、スピリチュアリズムの思想体系の全体像が明確に示されるようになったのです。
「初期スピリチュアリズム」と「現代スピリチュアリズム」
19世紀の心霊研究を中心としたスピリチュアリズムを「初期スピリチュアリズム」と呼ぶなら、20世紀初期以降のスピリチュアリズムを「現代スピリチュアリズム」と言うことができます。初期スピリチュアリズムと現代スピリチュアリズムは、ともに同じスピリチュアリズムに属しますが、内容的に大きな違いがあります。
初期スピリチュアリズムは「心霊現象」を中心とするものであるのに対し、現代スピリチュアリズムは高級霊の「霊界通信」を中心とし、地球人類全体に霊的真理をもたらし、霊性進化を促すことに重点が置かれています。初期スピリチュアリズムが心霊現象を通して「霊魂説」の正当性を主張しているのに対し、現代スピリチュアリズムは「霊的真理・霊的教訓」の啓蒙を主な目的としています。このように現代スピリチュアリズムは、初期スピリチュアリズムと較べると内容的に格段に進化しているため「ハイレベル・スピリチュアリズム」と言います。
21世紀現在のスピリチュアリズムは、19世紀の心霊研究を中心とするものとは、思想内容においても霊的レベルにおいても大きく進化しています。すべての内容が比較にならないほど高次元になっています。心霊現象に関する知識のレベルも、初期の頃と較べてあらゆる点でレベルアップしています。これまでの霊的知識が集積され、体系化されるようになっているのです。
現代スピリチュアリズムでは、心霊研究よりも霊的真理とその実践を重視しています。「霊的真理・霊的教訓」が現代スピリチュアリズムの中心となっていて、人類全体の「霊的成長・霊性進化」を最終目的としています。
霊性の優れた新人類の登場と、ハイレベル・スピリチュアリズムの確立
スピリチュアリズムが地上に登場して以来、160年の歳月が過ぎ去りましたが、その間、スピリチュアリズムは常に霊的レベルアップの道をたどってきました。そして今後も、さらにその霊的次元を高めていくことになります。スピリチュアリズムを論じるうえで最も重要な点は――「スピリチュアリズム運動は、人類に霊的救済をもたらすために高級霊が総動員で展開しているプロジェクトである」ということです。それは地球人類の霊性を向上させ、地球上に真の幸福をもたらそうとする人類史上、最大の計画なのです。
19世紀半ばにおける地上展開の当初から、スピリチュアリズムは霊界で立案された計画(ブループリント)に基づいて着々と進められてきました。スピリチュアリズムの初期には、霊界の計画にそって数々の心霊現象が演出されました。そして現在も、霊界からの働きかけによってスピリチュアリズムの質的向上がはかられています。現代スピリチュアリズム(ハイレベル・スピリチュアリズム)は、21世紀の地球人類に、最も重大な霊的影響を与えているのです。
スピリチュアリズムは今後、今よりさらに大きく変化・進歩するようになっていきます。また人類の霊性も現在とは比較にならないほど向上することになります。霊的な直感で霊的真実を悟ることができる人間、霊界からの働きかけやインスピレーションに適切に呼応することができる人間が、ますます増えていくようになるでしょう。そうした動きにともなって「現代スピリチュアリズム」はさらにレベルアップし、「真のハイレベル・スピリチュアリズム」が、地球規模で確立されるようになっていきます。
霊性の優れた人間がこれからのスピリチュアリズムの主流を形成し、かつてのような心霊現象だけに 関心を持つ人間は片隅に追いやられることになります。今後のスピリチュアリズム運動は――「心霊現象」と「霊的真理・霊的教訓」を思想的土台とし、その上に「真理の実践」を積み上げるというより高次元の段階に入っていくことになります。そして霊的真理が、地球人類共通の思想・常識になっていくようになるのです。
以上の内容をまとめると、次のようになります。

【4】スピリチュアリズムにおける心霊現象の通史
――計画的な心霊現象演出の推移
スピリチュアリズムの心霊現象の推移(歴史的経過)を図示すると、次のようになります。これはスピリチュアリズムの心霊現象の通史図です。
