アメリカ大統領選挙にみるアメリカ社会の本質と、米国でのスピリチュアリズムの展開

ニューズレター第28号

このたびの米国大統領選挙は、大方のマスメディアの予想を覆し、ブッシュ再選という結果に終わりました。この大統領選挙によって、私達はそれまであまり知ることのなかった米国社会の本質の一面を垣間見ることになりました。スピリチュアリズムから見たとき、今回の選挙結果はどのように考えることができるでしょうか。

スピリチュアリズムこそが、世界を変えている

――世界情勢を見るときの大原則

世界的な事件や出来事に遭遇するとき、私達が真っ先に確認しておかなければならない重要な点は、地上世界の問題は政治によって根本解決が図られるのではないということです。国際政治によって戦争がなくなり、本当の平和がもたらされるようになるのではないということです。さらには国連などのような国際機関やマスメディア、大衆平和運動によって地球上から戦争が消滅するようになるのではないということです。

地球上に蔓延している不幸・悲劇はすべて、人類の物質中心主義と利己主義から引き起こされています。そうした根本原因を解決して人類に平和をもたらすことができるのは、スピリチュアリズムという霊界挙げての救済プロジェクト以外にはありません。

スピリチュアリズムのみが唯一の「真の反戦・平和運動」なのです。霊的真理の普及という人類規模の霊的革命をおいては、どのような方法も地球上の問題を根本的に解決することはできません。スピリチュアリズムによる霊的真理の普及こそが、最終的に地球から戦争を駆逐し、平和をもたらすことができるのです。私達スピリチュアリストは、まさにその大計画に参加している当事者なのです。これまでの霊界一丸となっての働きかけによって、地球は徐々に進化・向上の道をたどってきました。

こうした霊界の動きが分からないと、アメリカという唯一の超大国に過大な期待を寄せてみたり、その反対にむやみにアメリカに対して反発するといったようなことになってしまいます。そうした見方は、どこまでも物質的視野からの一面的で偏狭な判断に過ぎません。いうまでもなく今回のアメリカ大統領選挙が、これからの世界の行く末を決定的に左右するようなことはありませんし、仮に影響があるとしてもごく表面的なものに過ぎません。スピリチュアリズムからすれば、ブッシュもケリーもたいした違いはなく、強いて言うなら今後の世界の動向にとって、ブッシュの方が“ややまし”という程度に過ぎません。それよりむしろ今回の選挙結果が、偽善的平和主義者に衝撃を与えたという意味では、よかったと言えるかも知れません。

以上のような重要な点を押さえたうえで、米国大統領選挙を霊的な観点から見ることにしましょう。

偏向マスメディアと偏向アカデミズムが、純粋な信仰に負けた

世界中のメディアは当初、今回の選挙を、ブッシュ大統領のイラク戦争の是非を問うものと予想していました。マスメディアは、ブッシュ共和党=ネオコン=好戦派、ケリー民主党=リベラル=平和派という図式を描いて、世論をつくり上げていきました。ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNに代表される米国マスメディアの80%が、ケリー支持を打ち出したばかりでなく、報道面でもイラク情勢の悪化を拡大して伝え続け、ブッシュ不利の印象を強めていきました。そして世界中でブッシュ反対の世論をつくり出すことに成功しました。日本のマスコミや新聞も一部(産経・読売)を除いて、ほとんどがこれと同様の反ブッシュの論調を展開しました。そして露骨なほどにブッシュ落選への期待をあらわにしました。

また、アメリカの主要大学の教授陣は、極端にリベラル支持に傾いていました。たとえばハーバード大学の95%、コーネル大学の93%、エール大学の93%が、ケリー候補への支持を明らかにし、異常なほどの政治的な偏向状態にありました。他の大学もほとんどこれと同様に、圧倒的なケリー支持を表明しました。ハーバード大学では、保守主義を隠さなければ終身在職権を得られないと言われています。このようにアメリカの大学界・アカデミズムは極端にリベラル寄りの立場に立っています。)

しかし、いざ投票箱のふたを開けてみると、イラク戦争の妥当性よりも倫理・価値観が焦点となっていたことが明らかにされ、ブッシュの再選が果たされました。マスメディア、特にブッシュ落選を心待ちにしていたマスメディアは、選挙の結果にショックを受け、手の平を返すように論調を変えるようになりました。

80%のマスメディアが支持し、90%を越す主要大学の教授陣(アカデミズム)の支持を取り付けたケリー候補を破った原動力、すなわち今回のブッシュ再選の要となったのは、キリスト教右派(保守派)でした。リベラルの85%がケリーを、キリスト教保守派の84%がブッシュに投票したという、支持層を二分した今回の大統領選挙は、まさに米国の社会状況を端的に示したものと言えます。選挙結果は、人間の理性を重視する人間中心主義のリベラル派やマスメディアが、純粋な神への信仰を中心とする宗教勢力・宗教支持層に負けたということになります。

宗教大国という、もう一つの大きな姿

私達がアメリカというと真っ先に思い浮かべるのは、ニューヨークやワシントンやボストンなどがある東部海岸地域と、ロサンゼルスやサンフランシスコがある西部海岸地域です。アメリカ旅行といえば、まずこうしたリベラル色の強い地域を訪れます。そのため大半の日本人は、それらの地域がアメリカすべての代表のように思い込んでしまいます。そこには進歩的気風と自由、実力主義と個人主義が闊歩し、まさにこれこそがアメリカ的なるものだと圧倒させられます。

確かにそうしたものはアメリカの現実ですが、しかし、アメリカにはそれに匹敵するもう一つの別の大きな顔があるのです。それがアメリカは「世界最大の宗教大国」であるということなのです。この点でアメリカは、ヨーロッパや日本などの先進諸国とは本質的に異なっています。多くの日本人は、アメリカが現在も世界最大の宗教大国であるという事実に全く気がついていません。

アメリカという世界最大の宗教国家を支えているのが、アメリカ大陸の中部と南部の広い地域です。今回の選挙では大半の中南部の州で、ブッシュ氏が勝利を収めています。中南部の多くの地域では、現在でも過半数の人々が毎週教会に通っています。アメリカのキリスト教における原理主義的傾向教義を厳格に守ろうとする信仰傾向)は相当に強く、純粋にそして熱心にキリスト教の信仰を守っています。子供に対する宗教教育も徹底しています。今回の大統領選挙では、こうした人々がブッシュ氏を支持したために、再選が果たされることになったのです。

今回の選挙は世界中の人々に、宗教国家としてのアメリカでの宗教の力を見せつけることになりました。宗教の力を過小評価していたマスメディアは、足元をすくわれることになりました。マスメディアの傲慢さが、純粋な信仰心に負けたということです。

スピリチュアリズムの「霊主肉従」の観点から見た、米国の宗教・社会事情

ブッシュ氏を支持した熱心なキリスト教徒特に中南部のキリスト教右派の人々)は、倫理観や信仰を最も重視し、実際の選挙ではイラク問題やテロ対策以上に、同性婚や妊娠中絶などの倫理問題に呼応しました。こうした人々の中には当然、イラク問題についてはブッシュ氏と反対の意見を持っていた人もいたはずですが、最終的にはそうした人々も、ブッシュの倫理観に共鳴しブッシュ氏に票を投じたのです。政治や戦争よりも、信仰を重視するという傾向が浮き彫りにされました。

こうした熱心な信仰者は、生活も清く、性の乱れもなくストイックで「霊主肉従」の努力を当然のこととして受け入れています。日本の高校生からは想像もつきませんが、キリスト教の影響の強い地域社会では、異性と交際している高校生はほとんどいないというようなことも珍しくありません。

それに対しリベラル支持者は、人間の自由と進歩主義を尊重し、信仰より人間の理性を重視する傾向が強いのです。信仰(神)中心主義を人間中心主義に変えることによって、「霊主肉従」のために必要な本能抑制の努力(ストイック努力)を否定し、結果的に霊的堕落状態を引き起こすようになっています。肉体本能に支配されて「肉主霊従」に流されるようになり、性の乱れを発生させることになっています。最低限の霊性維持さえできなくなって、獣に等しい醜い状態に堕ちています。ケリー候補は、そうした人々が受け入れやすい公約を掲げました。人工中絶を容認し、同性婚に対しても黙認の方向を打ち出しました。

霊性の維持という点からすれば、明らかに信仰派の方がスピリチュアリズムに近いと言えます。リベラルの理性重視は決して間違っていません理性は間違った宗教教義・ドグマから人々を救い出す強力な力です)が、「信仰心」そのものまでも捨て去ることによって「肉主霊従」状態に陥り、スピリチュアリズムから懸け離れるようになってしまいます。もちろんすべてのリベラル派が霊的に堕落しているというわけではなく、またすべての信仰派が清らかで霊主肉従を保っているわけではありませんが、全体の傾向としては大きく二分されます。この問題は最終的には、一人一人の霊性に帰着します。)

一方、死刑についてはブッシュ氏は賛成、ケリー氏は反対、銃規制についてはブッシュ氏反対、ケリー氏賛成で、ともにケリー氏の政策の方がスピリチュアリズムに近いものとなっています。

「スピリチュアリズム・ブーム」と「ニューエイジ」

ここでスピリチュアリズムに話を持っていきましょう。スピリチュアリズムが19世紀半ば、フォックス家事件から出発したことはスピリチュアリストなら誰もが知っています。スピリチュアリズムの中心が英国に移る19世紀末まで、アメリカ国内ではスピリチュアリズムの旋風が巻き起こりました。これを「第1次スピリチュアリズム・ブーム」と呼ぶとするなら、21世紀には間違いなく「第2次スピリチュアリズム・ブーム」が米国内に起こることになります。

アメリカは世界の雛形ひながたで、アメリカで生じること(ブームになること)は善きにつけ悪しきにつけ、その後、時をへて世界中に広がることになります。もしアメリカに「ハイレベルのスピリチュアリズム」が普及するようになれば、そのうねりは世界中に伝わるようになります。まして現在はインターネットの時代です。その影響力は瞬くうちに世界中に及ぶことになるでしょう。

第1次スピリチュアリズム・ブーム以降、アメリカのスピリチュアリズムは精彩を欠くようになり、一部の人々の間で、細々と命脈を保つというような状態が続きました。そうした中で20世紀後半になって、ニューエイジやチャネリングが、突如大きなブームを巻き起こすことになりました。実はこれらの動きは、霊界から「ハイレベルのスピリチュアリズム」受け入れのための準備として仕組まれたものでした。ニューエイジは、今回の選挙でリベラルの支持層が多かった西海岸地域と東海岸地域で流行しました。

最後の輝きの時代を迎えている、現在の米国キリスト教

スピリチュアリズムはいうまでもなく、キリスト教に反対の立場に立っています。スピリチュアリズムにとっての最大の敵はキリスト教です。アメリカにおいて、いまだにキリスト教が強大な権力を持っているということは、アメリカがスピリチュアリズムとキリスト教の最後の決戦場になるということを意味します。

ヨーロッパでは、人間の理性重視の風潮が強くなるにともない、キリスト教は徐々に衰退しました。それに合わせるかのように、英国においてスピリチュアリズムとキリスト教が衝突しました。先輩スピリチュアリスト達の人生を懸けた必死な闘いの結果、スピリチュアリズムは勝利を収めることになりました。地球規模で見るならば、今やキリスト教との戦いは決着がつき、キリスト教は時間の経過とともに衰退し、反対にスピリチュアリズムはますます勢いを拡大していくことが確定的になっています。アメリカのキリスト教は、そうした衰退の流れの中における最後の大きな輝きなのです。その光がどれほど強くても、しょせん最後のひと輝きに過ぎません。

このキリスト教の最強の残存勢力に打撃を与え、スピリチュアリズム導入の道を開拓するために引き起こされたのが、ニューエイジだったのです。ニューエイジは低次元のスピリチュアリズムの尖兵と言えます。

米国社会のスピリチュアリズムの受け入れ

霊界から計画的に展開されたニューエイジによって、徐々にスピリチュアリズム受け入れの霊的な準備が整い始めています。リベラルの流れの中でニューエイジは展開しますが、そこでは同時に「肉主霊従」というマイナスの問題も現出しています。霊的清らかさという点で、これまでのニューエイジは多くの問題を抱えていますが、やがてその中から時期のきた人々が、シルバーバーチなどの高次元のスピリチュアリズムと出会うようになっていきます。

一方、純粋であっても従来のキリスト教に縛られ、そこから一歩も抜け出ることができない信仰者に、スピリチュアリズムが浸透していく可能性はあまりありません。おそらくはその子供達、孫達の代に至って、スピリチュアリズムは受け入れられるようになるでしょう。

今後スピリチュアリズムは、ニューエイジ流行の基盤となっていた地方(西部海岸・東部海岸)から展開することになります。現在のアメリカはあまりにも多くの問題が複雑に入り組んで、混沌としているように思えますが、スピリチュアリズムの観点から見ると、これからのスピリチュアリズム展開の様子が明確に浮き彫りにされます。

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