霊界ラジオは果たして可能か?

――ITC(現代版霊界ラジオ)について

ニューズレター第9号

最近出版された、『あの世の存在に活かされる生き方』(徳間書店)についての質問が寄せられています。「その本には、電子機器を通じて霊界との交信が成功したと書いてありますが、本当でしょうか」といった内容です。

ITCとは、Instrumental Transcommunicationの略で、電子機器を用いたあの世との交信のことです。かつてはエジソンなどによって霊界ラジオの研究が進められましたが、ITCではラジオの代わりに現代の最新電子機器を用います。霊界ラジオについては、これまでスピりチュアリズムの中でもしばしば話題に取り上げられました。しかし現在に至るまで、霊界ラジオが成功したという事実はありません。シルバーバーチは、霊媒が存在しないところでの霊界と地上世界の交信はあり得ないと断言しています。

「顕と幽の二つの世界の交信にとって不可欠の要素である霊媒に取って代る器具を考案中という話は聞いたことがありません。それは絶対にできないでしょう。なぜと言えば、二つの世界は霊と霊との関係、つまり霊性で結ばれているからです。」

『古代霊シルバーバーチ 新たなる啓示』(ハート出版)p.125

しかし、『あの世の存在に活かされる生き方』の中には、最近のITCの研究によって、地上でキャッチされたあの世の霊の映像が実際に掲載されています。それを見た人々は、人類はとうとう電子機器を用いて霊界との通信を可能にするようになった、と思われたはずです。

シルバーバーチが言ったことは間違っていたのでしょうか。ITCは、霊媒の存在なしにあの世との交信を可能にしたのでしょうか。あの世とストレートに交信したいという人類の長年の夢は、本当に実現したのでしょうか。ITCの成功によって、霊媒は今後、不必要なものになるのでしょうか。結論を先に言いますと、ITCにおいても、霊媒なしにあの世との交信をするという試みは、依然、成功していないということです。

以下、ITCにおける交信の実態を検証し、改めてあの世との交信における問題点を考えていきたいと思います。

あの世の研究グループの存在

『あの世の存在に活かされる生き方』の中には、幽界において、地上との交信を研究しているグループの存在が述べられています。「タイムストリーム」と呼ばれるその研究グループには、千人以上の科学者が集まり、今もあの世とこの世を結ぶ交信についての研究を進めていると言います。その研究グループと地上の研究者がタイアップすることで、ITCの実験・研究が行われてきたと言うのです。

私達はすでに霊界通信を通じて、霊界には、地上人生で身に付けた知識・能力を活用して、地上と同じような研究を続けている多くの研究者のグループがあることを知らされています。そこでの研究は、ありとあらゆる分野に及び、心霊治療や今回のような地上との交信もその中に含まれています。

この「タイムストリーム」と呼ばれている研究者グループは、明らかにスピリチュアリズムの大計画の一部に組み込まれていて、末端の責任と任務を担っているものと考えられます。タイムストリームは、高次の霊の指導下で、スピリチュアリズムの一環としての研究を進めているということです。そのタイムストリームは、霊界の下層・幽界(アストラル界)に存在すると述べられています。(186~187頁)

地上近くの幽界には地上的要素が残っています。そこに住む霊達は、地上的感覚と地上時代の習性をそのまま死後に持ち越し、いまだに十分な霊的浄化を果たしていません。地上時代に科学者だった者は、この世界では同じように研究生活に明け暮れることになります。そういう霊達はきわめて知的ですが、霊的には未熟なのです。こうした知的で未熟な霊達が、高級霊の指導の下で人類の進化に貢献する道を歩み、同時にそれを通じて、自らの霊的成長のための準備をすることになるのです。

さて、『あの世の存在に活かされる生き方』では、タイムストリームの中にエジソンやキューリー夫人、アインシュタインなども属していることが述べられています。しかし死後50年以上も霊界にいるエジソンやキューリー夫人が、今なおこうした幽界(アストラル界)にとどまっていることについては、疑わしいと言わざるを得ません。もしそれが事実なら、エジソンもキューリー夫人も、低い霊性しか持っていなかったことになります。あるいは、これらの研究グループに対する上位の指導者ということならば、そうした可能性はあると思われます。

また、タイムストリームの指導者(ディレクター)であるスエジェン・サルターについても、その身元に関する記述内容は全く信憑性を欠くものとなっています。低級霊のからかいとしか思えないようなことが述べられています。(23頁)従ってタイムストリームとして述べられているあの世の研究グループについては、それを文字通りに受け取るべきではありません。あの世と地上の交信を研究しているグループが幽界に存在するのは事実ですが、それがそのまま「タイムストリーム」であると思うべきではありません。

『あの世の存在に活かされる生き方』の問題点

『あの世の存在に活かされる生き方』の内容を検討するに先立って、この本全体を貫いている問題点を指摘することにしましょう。この本は、ITCを紹介する目的で、二人のアメリカ人(パット・クビスとマーク・メイシー)によって書かれています。二人の著者は霊的世界についての豊富な知識を持っています。しかしそうした人間であっても、ITCに関する大きな先入観から逃れられなかったようです。二人は、霊界ラジオやITCは霊媒がいなくとも成立する、霊界からのメッセージ・情報を直接キャッチできると考えています。そうした考えに立って、この本は書かれています。

彼らは次のように述べています――「今日、私達はハイテクの時代を迎え、人間の心を介さなくても彼ら霊のこと)からの情報を直接に受信できるような装置がついに誕生したのです。実際、霊媒の心を通じて交信しようとしても、情報が正確に伝わることはまれです。これは霊媒が自分の受け取ることを翻訳している、つまり人間の心が元の情報にしばしば色づけしてしまうからなのです。」(178頁)

著者は、別のところで――「生まれつきにせよ訓練したにせよ、テレパシー能力の強い人は強力なコンタクト・フィールドを発生させることができるということも覚えておいてください。あなた自身や実験グループ中の誰かがこういった能力を持っていれば、早期の成功が期待できます」と述べています。(195頁)

これは明らかな論理矛盾です。先に自分の言ったことを、自分ですべて否定しているのですが、この本の中にはこうした論理矛盾が多く見られ、著者の考えが一貫していないことが窺えます。

結論を言いますと、霊媒がいなくとも交信が成立するという考えは、彼らの単なる思い込み・先入観にすぎません。ITCが、霊媒(霊媒的地上人)の存在なくして成立すると考えるのは、彼らが先入観のメガネを通して現象を見てきたからです。彼ら自身が取り上げている実例を見る限りにおいても、ITCが霊媒的存在なくして成り立つものとは、とても思えません。これについては後程詳しく述べることにしますが、本書はこうした著者の先入観・偏見が土台にあって、その上でITCが紹介されています。従って、本書を好意的に読む読者に対して、ITCは霊媒の存在なくして成立するものであるかのようなイメージを定着させることになります。この意味で、『あの世の存在に活かされる生き方』は、正しいITCの紹介書とは言えません。

この本には、それに係わる地上サイドの人間の心の状態が大切なものとして述べられています――「愛の気持ちを最大限に広げ、恐れの念をできる限り追い払い、否定的で不快なエネルギーを寄せつけないように努めなければならない。」(187頁)また他界の科学者達は――「自分達のメッセージの受信状態は、エネルギーの振動である人間の思考によって重大な影響をこうむる」と警告しています。(26頁)なぜこれほどまでに、地上サイドの精神的状況・雰囲気にこだわらなければならないのでしょうか。

実は、地上人の心の状態が、あの世との交信に必要とされるエネルギーの供給を左右するからです。単に地上人サイドの精神状態がよければ、それで霊界からの通信が受信しやすくなるという程度の問題ではありません。地上人の精神状態が、交信システムそのものが成立するかどうかを決定するという重要性を持っているからなのです。それについては、これから順を追って説明していきますが、その点を示唆するような事実があるにもかかわらず、著者(パット・クビスとマーク・メイシー)はその本質を理解するまでには至っていません。まさにそこにこそ、霊媒の必要・不必要の問題を論じるヒントが隠されているのです。

ITCにおいては、霊媒的存在が必要であるどころか、それなくしてはITC自体が成立しないのです。霊媒の必要性は、霊界サイドの研究者においては常識的なものになっています。問題は、地上サイドがその必要性を認識していないことなのです。地上人の精神的状況と霊媒の必要性を関連づけて考えられず、全く別物としていることです。良い精神的コンディションが交信には重要であることは認めても、それが霊媒能力のアップとの関係において認識されていないのです。そこから単純に、ITCでは霊媒は不要との短絡的な発想へと進んでしまっているのです。

本書はITCについての紹介書でありながら、霊界サイドの研究者の見解とは異なった考えを述べています。このことが、読者に混乱と悪影響を与えることになるのではないかと気がかりです。もし著者の偏見が本書を通じて広まるとするなら、それは正しいスピリチュアリズムの普及にマイナスとなるかも知れません。

以下では、「霊媒の関与」という重大な問題点を中心にして、霊界ラジオとITCについて、考察・検討していきたいと思います。

霊媒による二通りの交信形態

――直接的交信方法と間接的交信方法

人類歴史の太古から現在に至るまで、あの世との交信は常に「霊媒」(チャネラー)を介してなされてきました。霊的能力のある人ならば、霊との直接交流は可能となりますが、そうでない一般の人々においては、霊媒に頼らなければなりません。霊媒こそ、霊界との唯一の“交信道具”だったのです。また霊界の側にも、自分が生きていることを何とか地上人に伝えたいと切望している多くの霊達がいます。そうした霊達にとっても、地上の霊媒は唯一の“交信道具”となるのです。

また現在、霊界・地上の両世界で進められているスピリチュアリズムの大計画においても、「霊媒」はなくてはならない存在です。霊界から地上人類にメッセージや教訓をもたらすことがスピリチュアリズムの目的ですが、それは全て霊媒を通して行われるからです。そのため霊界側では、地上的な影響を少しでも排除し、より純度の高い霊的真理を地上にもたらすために、優れた霊媒を求めてきました。

高度な真理・教訓を伝えるには、文字か言葉を使用しなければなりません。そのためスピリチュアリズムにおいては、霊による書記や談話が中心的な手段として用いられてきました。文字や言葉以外にもインスピレーション(テレパシー)という方法があります。インスピレーションは高次の世界との交信には最も便利なのですが、それを地上の言語や表現に変換する際に、大きな問題を持つことになります。

文字や言葉を用いた霊界からのメッセージの伝達には、二つの形態があります。一つは、近代心霊研究において、直接書記や直接談話と言われてきたものです。直接談話(ダイレクト・ボイス)では、霊媒から供給された半霊的・半物質的エネルギー(エクトプラズム)を用いて、メガホンや発声器(ボイスボックス)を作ります。(図1)

【図1】 直接談話のメカニズム

霊はこの発声器を用いて、直接地上人に語りかけます。とは言っても、それは簡単にできることではなく、肉体も声帯もない霊は、大変な努力をして地上時代と同じような声を作り出すのです。発声器(ボイスボックス)を通じて生前と同じ声が聞こえるため、霊はあの世でも地上と同じように言葉を使っていると思われがちですが、それはどこまでも、生前の声を真似て作り出した音声にすぎません。これらは全て地上人に身元を確認させるためにしていることなのです。しかし時には、低級霊が故人の声色こわいろを使って、地上人をからかうようなことが起こります。こうした直接談話は、死後それほど時間が経っていない霊であればあるほど、やりやすくなります。霊界では地上のような言葉を使用することがないため、霊界での生活が長くなれば、その分だけ地上時代の声の再製は難しくなるのです。

霊の交信のもう一つの形態は、間接的に通信を送るというものです。霊媒の身体を用いての書記や談話で、一般にいう霊媒現象です。これは私達には身近な方法ですが、その仕組みは複雑で、ここでは詳細に述べることはできません。ただかいつまんで言えば、霊媒の“潜在意識”を支配することによって、霊媒の身体を自分の身体のようにコントロールし、オーラとオーラを融合させ、文字を書いたり話をするということです。

この場合、霊が「霊媒」をどこまで自分の道具として使いこなせるかどうかが成功・不成功を決定します。こうした方法では、霊は、霊媒の持っている言葉や声帯を使うため、霊媒の母国語で話すことになり、音声も霊媒のものになります。霊媒が年寄りならば、その声も年寄りになります。スピリチュアリズムのような高度な思想内容を通信するためには、この方法が最もふさわしいのです。シルバーバーチやインペレーターの通信が、こうした方法で行われたことは今さら言うまでもありません。

以上、わざわざ二つの「霊媒現象」の仕組みについて説明したのは、霊界ラジオが外見上は、直接的な方法(直接談話)に似ていることを確認していただくためです。直接談話(ダイレクト・ボイス)では、霊が発声器を通じて、直接地上人に話をします。霊媒の身体や声帯を介さずに、地上人に語りかけることになりますが、これは霊界ラジオと見かけは同じなのです。

霊界ラジオの目指したものは?

霊媒を通じて交信する場合には、霊媒のインチキ、霊媒の能力のバラツキ、低級霊の関与といったさまざまな問題がつきまといます。こういった問題があるため、「霊媒を用いないであの世との交信はできないものか」ということになりました。もし本当に霊媒を使わなくても、あの世の霊の声が聞けるということになれば、どんなにすばらしいことでしょう。もしそれが実現するなら、誰もが霊界の存在を信じるようになるに違いありません。霊界ラジオは、まさにこのような発想から出発したのです。

直接談話では、霊→ボイスボックス(霊媒のエネルギーで作ったエクトプラズムの発声器)→音声、というプロセスが踏まれます。(図1参考)

一方、霊界ラジオでは、エクトプラズムの発声器の代わりに物質でできたラジオを用います。霊→地上のラジオ→音声、というのが霊界ラジオのプロセスです。ITCも原理的には霊界ラジオと同じで、ラジオが電子機器に代わり、ラジオの音声にさらに電子機器による映像が加わります。(図2)

【図2】 霊界ラジオ・ITCのメカニズム(?)

霊と物質をつなぐ原理・この世とあの世をつなぐ原理

霊は、ストレートに物質に影響を及ぼすことはできません。逆に物質も、ストレートに霊に影響を与えることはできません。霊→物質、霊界→地上世界という、ストレートな流れは成立しないのです。

もし霊と物質の直接交流が可能ならば、霊界から地上に向けての働きかけは自由になり、その結果、地上世界はとっくの昔に天国になっていたはずです。しかし高級霊といえども霊である以上、物質世界に直接影響力を行使できないため、今日まで地上世界は悲惨な状態に置かれてきたのです。「顕幽の壁」があるために、スピリチュアリズムの展開において、霊界側は多大な苦労を重ねてきました。こうした点から考えれば、霊からの通信を、単なる物質次元の道具であるラジオでキャッチしようという霊界ラジオの試みは、初めから不可能であることが分かります。

霊と物質の結び付き、霊界と物質世界の結び付きは、すべて地上の人間を媒介として成り立つようになっています。(図3)

【図3】 霊界と地上界をつなぐ原理

地上の人間は「霊体」と「肉体」から成り立っています。私達の霊体は、霊的世界と同じ要素でできています。そのため霊的世界との交流を持てるようになっています。一方肉体は、物質世界と同じ要素でつくられているため、物質世界と関係をもち影響を及ぼし合えるようになっています。このように、地上の人間のみが、霊界と物質界という異なる二つの世界と係わりを持つことができるのです。地上の人間のみが、霊界と地上界をつなぐことができるということなのです。

こうした事情があるため、霊界から地上に向けての働きかけは、常に地上の人間を媒介として進められてきました。

いかなる高級霊であっても、地上の人間の存在なくして、地上に影響力を行使することはできません。どのような場合にも、霊→地上人(媒介)→地上世界(物質)というプロセスを踏まなければならないのです。これが霊と物質、霊界と地上世界を結ぶ鉄則なのです。霊媒だけが、霊界と地上世界をつなぐわけではなく、地上人の誰もが、本質的にはそうした立場に立っているのです。ただ霊媒と言われる人々は、霊界からの影響力をキャッチする感度が一般の人よりも高い、ということに過ぎません。

霊と物質の関係は、エネルギーについてもそのまま当てはまります。(図4)

【図4】 地上人を媒介(通過体)とする霊的エネルギーの物質化プロセス

霊界から送られてくる霊的エネルギーは、そのままの形では物質世界にストレートに入っていくことはできません。霊的エネルギーはいったん地上人を通過することによって、半霊的・半物質的エネルギーに変換させられます。こうした「霊的エネルギーの物質化」のプロセスを経て、霊的エネルギーは地上にもたらされるようになるのです。

心霊現象における“エクトプラズム”は、半霊的・半物質的エネルギーの中でも、特に物質性の強いものです。霊的エネルギーの物質化のプロセスは、心霊治療の際にも行われていることは、あえて説明するまでもないでしょう。そして霊界ラジオも、こうした霊的エネルギーの物質化というプロセスがあって、初めて成立するものなのです。

霊界ラジオやITCには、地上人からのエネルギー供与が不可欠

いかに地上の受信装置が精緻であっても、物質である以上、霊的エネルギーをストレートに受け取ることはできません。いかに霊界の人々が絶叫しても、その声が、じかに物質に反応することはありません。『あの世の存在に活かされる生き方』の中には、事実、霊から送られてきたと思われる映像が映し出されていますが、これらはすべて今述べてきたように、霊的エネルギーが物質化された結果、もたらされたものなのです。地上の研究者がそれを認識しているかいないかにかかわらず、ITCでは、必ず「霊的エネルギーの物質化」というプロセスが踏まれています。(図5)

【図5】 地上人からのエネルギー供給による霊的エネルギーの物質化プロセス

霊的エネルギーの物質化のためには、地上の人間から出ている半霊的・半物質的エネルギーが供給される必要があります。そうしたエネルギーを多く与えられる人が「霊媒」なのです。しかし、これは何も霊媒でなければならないというわけではありません。霊媒ほどではなくても、少しでも多く半霊的エネルギーを放出している人(霊媒的な要素のある人)であれば、誰でもよいのです。さらには霊的素質があまりなくても、そういう人達が集まってわずかずつでもエネルギーを出し合うような状況ができれば、それで役割を果たすことができるようになります。時には、ちょっと離れたところにいる霊媒体質者からエネルギーを持ってきて利用することもあります。エネルギーの供給は、こうしたさまざまな形で可能になりますが、最も効率的なのは、実験室に強力な霊媒がいて、十分なエネルギーを得られる場合であることは言うまでもありません。

ITCにおいては、このような状況下で霊の姿が映し出され、その声を聞くことができるのです。霊の発する霊的エネルギーが、地上人からの半霊的・半物質的エネルギーを受けて質的に変化し、ラジオから流される音声から材料となる音を拾ったり、映像を作るために機器に働きかけることができるようになるのです。(図6)

【図6】 霊界ラジオ・ITCのメカニズム

霊界ラジオもITCも、結局は、半霊的・半物質的エネルギーを供給する地上人がいなければ成立しません。直接談話(ダイレクト・ボイス)では、霊媒のエネルギーが半物質の発声器(メガホン、声帯、ボイスボックス)を作り、これを霊が用いて声を出しました。霊が直接発声器を使用することができたのは、発声器自体が半物質の材料でできていたからです。(図1参考)もし発声器が純粋な物質でできていたら、霊はそれを直接使用することはできません。霊界ラジオやITCの場合は、霊から送られてくる霊的エネルギーがまず半物質化され、その後に、物質的な道具に働きかけるという順番になっています。

【図7】 心霊写真のメカニズム

心霊写真は、ITCによる映像化と同じメカニズムで成立します。(図7)

“地縛霊”が、近くにいる地上人やカメラを持っている本人から半霊的・半物質的エネルギーを吸収し、自分の体を半物質化することで、フィルムに反応するようになります。従って心霊写真ができるためには、エネルギーを与えることができる地上人(霊媒体質者・霊的体質者)が近くにいることが“絶対条件”となります。

心霊写真と念写では、メカニズムが全く異なります。前者はスピリチュアルなものであり、ITCによる映像化と同様な仕組みで成立しますが、後者はサイキックによるものです。

スピリチュアルとサイキックの違いについては、今後のニューズレターで取り上げる予定です。

ITCの実験は“交霊会”と同じである

スピリチュアリズムでは“交霊会”を成功させるために、参加者の心が一致して和やかな雰囲気をつくり出すことが重要視されてきました。参加者の心が一致せず、不調和なエネルギーが支配的な時には、質のよい交信ができなくなります。また部外者が突如参加したり、懐疑論者がいる時にも、交霊会のエネルギー状態に乱れが生じ、交信がしにくくなります。霊が通信を送るのに必要とされるエネルギーは、霊媒一人から摂取するのではなく、普通は参加者全員から少しずつ集められます。こうした事情があるために、通信を送る霊界サイドは、交霊会の参加者の心の持ち方や精神状態について、繰り返し注意を促してきたのです。参加者の精神状態が悪かったり調和を欠く時には、エネルギーの流れ自体が阻害されたり、粗悪なものになってしまいます。霊が働くための十分なエネルギーが供給されなくなってしまいます。エネルギーの乱れが、高級霊を遠ざけ低級霊を引き寄せることになります。このように交霊会の成功・不成功の鍵は、霊界サイドよりも地上サイドが握っている、ということなのです。

ITCの実験においても、あの世サイド(タイムストリーム)から地上人に向けて、何度も高い心境が必要であることが語られています。もしITCが、霊から物質へ、霊界から地上世界へ、という単純なプロセスによって可能になるものならば、地上人の精神状態などは、交信とは一切無関係なはずです。結局ITCは、地上人の心によって決定的な影響を受けるということなのです。

こうした現実は、地上サイドに「霊媒的存在」がなければ、ITCは成功しないことを明らかにしています。霊界ラジオでもITCでも、より良い成果を上げようとするなら、心身の健全な霊媒を数名そろえることです。それが最も確実に霊界のメッセージを得るための方法なのです。地上の電子機器の性能を上げれば、それだけであの世との交信が強化されるといったものではありません。

このように考えてくると、ITC(最新の電子機器によるあの世との交信)は、本質的には従来の交霊会と全く同じであることが明らかになります。つまりITCは、「霊現象」の一つに他ならないのです。

ITCの今後の課題

――交霊会と同様の問題点の克服

ITCが本質的には「霊現象」と同じであるということは、ITCの実験には交霊会と同様の問題が付随することを意味しています。霊界の下層(幽界)には、地上に通信を送りたがっている多くの霊達がいます。困ったことに、そうした霊達の大半が低級霊・未熟霊なのです。従ってITCも、そうした低級霊達の格好の的になるということです。このことは、『あの世の存在に活かされる生き方』の中でも述べられています。(186頁)

霊界通信で、低級霊を排除する役割を担っているのが“審神者さにわ”です。当然のこととしてITCにおいても、こうした神審者の役割を果たす地上人が必要となります。それなくしては、あの世との交信はメチャクチャなものになってしまいます。交霊会では、神審者や参加者の霊的レベルが通信のレベルを決定しますが、ITCにおいても全く同様のことが言えるのです。ITCの現状を見る限り、通信霊の真偽や霊のレベルを見極めるには程遠いと言わざるを得ません。霊界通信では低級霊が身元を偽って頻繁に出現しますが、ITCにおいても映し出された映像が、本当に霊界の本人そのものかどうかをチェックする必要があります。

こうした問題点をあげていきますと、果たしてITCによるあの世との交信は必要なものかどうか、ということになります。ITCの目的と存在価値について、よくよく考えなければなりません。交霊会は本来、死後の世界や霊の存在を信じられない人にとってのみ必要なものです。ITCも、結局はそれと同じ目的において、はじめて意味を持つものなのです。ITCを通して、これまでの「霊界通信」によってもたらされた以上の高度な交信が可能になるとは思われません。すなわちITCとは、従来の霊的現象や心霊治療、あるいは交霊会と同様に、死後の世界のあることを人々に知らせる一つの手段に過ぎないということなのです。ITCはこれまでの交信と同じく、地上人からのエネルギーを受ける中で成立するものであり、方法論の点から見ても特別に画期的な交信方法とは言えません。

ITCの唯一の長所をあげるとするならば、ITCでは直接談話(ダイレクト・ボイス)がそうであったように、一人の霊媒からの直接的な悪影響を多く受けずに済む、ということです。

「霊媒は無くてはならない存在です。交信に必要なエネルギーは物的なものではありません。霊そのものから出ています。霊的身体から出ることもあります。いずれにせよ、必須の要素である愛がなくては、霊的なものを物的なものに転換することはできません。」

『古代霊シルバーバーチ 新たなる啓示』(ハート出版)p.126

「もしも霊界と地上との交信のための純粋な通信機械ができたら――そういうものは作れませんが――それによって得られる通信は、美しさと尊厳さが失われるでしょう。」

『シルバーバーチの霊訓(4)』(潮文社)p.162

遠い将来、地上人の霊性が高まった時には、自らの霊的能力によって、誰もが霊界の人々と個人的かつストレートに交信できるようになります。現在ではきわめて一部の優れた霊通者のみが高級霊と交信できるだけですが、将来においてはそうした人間が、ごく当たり前の存在となります。その時には、もはや霊界ラジオとかITCといった特別な機器も不必要になります。霊媒という特別な媒介者も要らなくなるはずです。

今の私達にとって最も必要とされていること、そして現在の地球上で最も価値ある生き方とは、単にあの世の霊と交信することではありません。それは、すでに高級霊によって示されている「霊的真理」を人生の指針として歩み、自らの霊性を高めること以外にはないのです。

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