英国スピリチュアリズムの最新情報
――月刊心霊誌“ツーワールズ”が“サイキックニューズ”と合併。トニー・オーツセンが、サイキックニューズの新しい編集長に
インフォメーションNo.28
3月のある日、トニー・オーツセンから「エキサイティングなニュースがあります」とのメールを受け取りました。そのビッグニュースとは――「ツーワールズがサイキックニューズと合併し、1つの心霊誌として新たな出発をすることになった」そして「その新しい心霊誌の編集長にトニーが就任することになった」という内容でした(*新しい心霊誌は“Psychic News incorporating Two Worlds”という名称で、7月号から発行されます。合併といっても実際には、ツーワールズがサイキックニューズに吸収される形です)。
メールには2つの心霊誌が合併に至る経緯が述べられていて、トニーが今回の合併を霊界の導きによるものとして、とても前向きに捉えていることが分かりました。メールには――「今まで影が薄れていた感のあったシルバーバーチを、もっと大々的に前面に打ち出していこう!」との決意が述べられており、新編集長としてその雑誌にかけるトニーの意気込みが伝わってきました。
私たちも、今回の合併を霊界の導きによる英国スピリチュアリズム界の発展のチャンスと受け止め、『シルバーバーチの霊訓』を世に送り出すためにバーバネルがサイキックニューズを創刊した当初の目的に戻るものとして賛同の気持ちを伝えました。そして、サークルのメンバー全員が応援しているとの激励のメッセージを送りました。
130年以上の“ツーワールズ”の歴史に幕が下ろされる
これまでトニー・オーツセンは、ツーワールズの編集長として孤軍奮闘し、発行を継続してきました。“ツーワールズ”とは、文字通り「霊界と地上界の2つの世界」という意味です。ツーワールズは、19世紀半ばにスピリチュアリズムが勃興してさほど時間が経っていない時期(1887年)に、エンマ・ハーディング・ブリテンという女性スピリチュアリストによって創刊されました。言うまでもなく、それは世界初の心霊誌です。
当時の英国スピリチュアリズムは、交霊会を中心とした心霊実験研究を盛んに行なっていて、スピリチュアリズムとは交霊会で心霊現象を演出したり、霊媒を通して死者と交流することと思われていました。ほぼ同時期にフランスでは、アラン・カルデックによってスピリティズム(フランス系スピリチュアリズム)が始まっていました。“ツーワールズ”創刊の目的は、スピリチュアリズム運動について広く知らせ、霊魂や死後の世界が存在することを人々に啓蒙することでした。
その後、ツーワールズ誌は、名実ともに世界的権威を有する心霊誌として歴史を重ね、現在に至りました。その期間は130年以上にも及び、2018年の6月の最終号は何と4493号になります。ツーワールズは文句なしに、世界最長の歴史を誇る心霊誌であったと言えます。トニーもその権威ある心霊誌を絶やすまいとして、わずかな援助しか得られない状況の中で、孤軍奮闘の厳しい戦いを続けてきました。
私たちがツーワールズの事務所を訪問した際、トニーはこれまで出版されたツーワールズの縮小版を見せてくれました。頁をめくると、そこには貴重な心霊現象の写真が満載され、スピリチュアリズムの初期から現代に至るまでの歴史が克明に記されていました。その縮小版は、まさにスピリチュアリズムの歴史書と言ってもいいような内容を持っていました。
トニーがツーワールズの編集長に就任したときには、すでに衰退期に入っていて購読者は減少し、苦しい経営状態にありました。ツーワールズの事務所は、テームズ川畔のかつての石造りの倉庫の一室に設けられていました。そして近くにはイギリスで最も古いパブがあり、そこで一緒に昼食をとりました。
その後、ツーワールズは経済的にさらにひっ迫したためその事務所を引き払うことになり、最後はトニーのアパートの一室を事務所代わりにして発行を続けるといった厳しい状況が続きました。トニーは、自分の人生を賭けてツーワールズ存続のために必死の努力をしてきました。とは言っても、トニーはいつも明るく楽天的でポジティブシンキングの持ち主です。決して私たちに絶望的な様子を見せるようなことはありませんでした。
しかし、英国スピリチュアリズム界全体の衰退と歩調を合わせるように、ツーワールズの読者は徐々に減少していきました。英国スピリチュアリストの多くが年老いた年金生活者となり、さらに重要な購読者であったスピリチュアリスト・チャーチも教会員の減少で次々と閉鎖に追い込まれ、読者数の減少に歯止めがかからなくなっていきました。特にここ2~3年の状況は厳しく、とうとう“サイキックニューズ”との合併に至ってしまいました。こうして、今年の6月をもって世界で最も長い歴史を誇ってきた“ツーワールズ”が幕を降ろすことになりました。ツーワールズの終焉という出来事に、英国スピリチュアリズム界の衰退状況が端的に示されています。
紆余曲折の歩みをしてきた“サイキックニューズ”
サイキックニューズも、ツーワールズと並ぶ世界的な権威ある心霊誌です。サイキックニューズもツーワールズと同様に、現在まで紆余曲折の厳しい道をたどってきました。シルバーバーチファンの皆さんなら、サイキックニューズの名前をご存知のことと思います。
サイキックニューズは、シルバーバーチの霊媒を務めたモーリス・バーバネルが1932年に創刊した心霊誌です。『シルバーバーチの霊訓』を世の中に広く知らせるために、霊界の働きかけによってつくられた心霊誌で、当初は週刊誌でしたがやがて月刊誌に移行していきました。『シルバーバーチの霊訓』や霊的真理・霊的メッセージを世の人々に伝えるために、サイキックニューズは大きな役割を果たしました。サイキックニューズは、バーバネルが死去するまで編集長を務めました。1981年にバーバネルが他界した後は、トニー・オーツセンが編集長の座を引き継ぎました。
サイキックニューズが世界的権威のある心霊誌であるといっても、世の中の新聞や書籍のように一般大衆を対象としたものではないため、初めから購読者は限られています。そのため常に経営的に苦しい状況に置かれ、綱渡りのような歩みをせざるを得ませんでした。そうした紆余曲折の歩みを続ける中で、いったん編集長の座を退いていたトニー・オーツセンが再び編集長に返り咲くことになりました。その後、トニーはサイキックニューズ社を退社し、新たにツーワールズの編集長に就任します。そして先に述べたように、ツーワールズ存続のために懸命な努力を続けることになりました。
ツーワールズが厳しい道をたどらざるを得なかったように、サイキックニューズもまた、存続をかけた努力が続きました。しかしサイキックニューズはついに、英国最大のスピリチュアリストの組織SNU(英国スピリチュアリスト同盟)に買収され、その傘下に入ることになりました。この時点では『シルバーバーチの霊訓』を世に広めるという創刊当初の目的は失われ、その誌面は、世間一般の好奇心に迎合したような心霊現象や霊媒や神秘ものの類で占められていました。それは霊界から見たとき、ほとんど魅力のないものでした。やがてSNUはサイキックニューズの廃刊を決め、その歴史に幕を閉じることになってしまいました。その結果、トニーの奮闘によって“ツーワールズ”だけが生き残り、英国心霊誌の伝統を守ることになったのです。英国スピリチュアリズム界の衰退によって、それに関わる心霊誌が窮地に追い込まれていった状況がよく分かります。
サイキックニューズの廃刊という状況の中で、天から救いの手が差し伸べられました。“J.V.トラスト”という慈善財団が40万ポンド(約6000万円)を寄付して、サイキックニューズを再刊することになったのです。こうしていったん閉じていたサイキックニューズはSNUを離れて、J.V.トラストのもとで再出発を果たすことになりました。それが今から3年前、2015年のことでした。
そして再出発から3年が過ぎた今年、2018年に“ツーワールズ”との合併が決定し、トニー・オーツセンを新編集長に迎え、新たな体制のもとで次の段階へと歩みを進めることになったのです。トニーとしては結果的に、3度目の“サイキックニューズ”の編集長就任ということになります。こうした動きの背後に、霊界からの働きかけがあったことは言うまでもありません。
英国スピリチュアリズム界を資金的に支えてきた“J.V.トラスト”
サイキックニューズは、J.V.トラストからの資金援助を受けて再出発することになりました。J.V.トラストからの資金援助がなかったなら、サイキックニューズが再び表舞台に登場することはありませんでした。サイキックニューズの再刊は、ひとえにJ.V.トラストによるものです。
英国のスピリチュアリズム関連の施設も、J.V.トラストの資金援助によって維持・存続することが可能になっています。皆さんがよくご存知のアーサー・フィンドレー・カレッジも、J.V.トラストからの資金援助によって救われることになりました。アーサー・フィンドレー・カレッジは、英国スピリチュアリズムの教育施設として定期的にセミナーを開くなど、スピリチュアリズム運動に寄与してきました。アーサー・フィンドレー・カレッジには、世界中からスピリチュアリストが集っています。多くの日本のスピリチュアリストもそのセミナーに参加しており、アーサー・フィンドレー・カレッジはスピリチュアリズムの聖地と仰がれています。
アーサー・フィンドレー・カレッジも、かつては資金難の中で雨漏りのする老朽化した建物を修復することもできず、建物がどんどん朽ちていくような状況にありました。そうしたときJ.V.トラストから資金援助を得て、建物の修復が可能になりました。アーサー・フィンドレー・カレッジのかつてのチェアマン(会長)が今、J.V.トラストの責任者を務めています。こうした背景があって、サイキックニューズを再生させるために40万ポンド(6000万円)という資金援助が実現することになったのです。
*J.V.トラストは、2人の子供を病気で亡くしたワンドレス夫妻(夫のロイと妻のクリスティン)が600ポンドを寄付することで始まりました。夫妻は亡くなった2人の子供の思い出にと考え、息子ジョンの“J”と娘ヴァレリーの“Ⅴ”をとって、J.V.トラストという名称の慈善団体を立ち上げました。
夫婦の死後、遺言で寄付された家と土地の資産価値が高騰し、その資産を株式運用することでさらに資産を増やしていきました。J.V.トラストの資産は800万ポンドにまで膨らみ、それがスピリチュアリズム関連の組織や運動に対する資金援助を可能にすることになったのです。こうした意味で、現在の英国スピリチュアリズムにとってJ.V.トラストは、経済面における救世主的存在になっています。
J.V.トラストの誕生とその後の展開を見ると、その背後に霊界の確かな導きを感じ取ることができます。
トニー・オーツセンの手腕に期待!
トニー・オーツセンが最終的に名実ともに英国心霊誌のトップに立つことになったのは、必然的な結果と言えます。トニーこそ、その立場に最もふさわしい人物であり、そこに霊界の導きがあることは明らかです。トニーは“シルバーバーチの交霊会”の唯一の生き証人であり、スピリチュアリズムの動向のすべてに通じています。
トニーはメールの中で、新しいサイキックニューズの編集長に就任することについて、自らの決意をストレートに述べています。これまでのサイキックニューズは、スピリチュアリストの根本的要素を失っているように感じられ、そうした状況を可能なかぎり修正したいと言っています。誌面のレイアウトについても、いくぶん軽々しい感じがすると述べ、自分が編集長になったときにはもう少し伝統的な雰囲気にしたいと付け加えています。そして『シルバーバーチの霊訓』を積極的に載せていきたいと抱負を述べています。
名実ともに英国スピリチュアリズム界のトップに立ったトニーの「シルバーバーチを前面に出していく」との言葉は、本当に頼もしい限りです。それは霊界の人々が待ち望んできた言葉でもあります。これまで英国スピリチュアリズム界の中では、『シルバーバーチの霊訓』の重要性は一部のスピリチュアリストには理解されてきたものの、全体的にはマイナーの存在と見なされてきました。日本では、スピリチュアリズムと言えば『シルバーバーチの霊訓』というのが多くの人々の共通認識になっているのとは、あまりにも大きな開きがあります。
私たちはこれまで、英国スピリチュアリズムの中で『シルバーバーの霊訓』の重要性が正しく理解され、『シルバーバーチの霊訓』を中心とする新たなスピリチュアリズム運動が展開するようになることを願ってきました。その願いが今回の合併をもって一歩、実現に近づくことになったと感じています。
これまで私たちはトニーに対して繰り返し、日本では『シルバーバーチの霊訓』を中心にスピリチュアリズムが展開している事実を知らせてきました。日本のスピリチュアリズムが心霊現象の段階を越えて、『シルバーバーチの霊訓』を指針とする信仰レベル・宗教のレベルの運動として広がっている事実を知らせてきました。そして、これから日本のスピリチュアリズムは“シルバーバーチ”を中心に大きく展開していくようになることを伝えてきました。
英国のスピリチュアリズム界は、その歴史が長いだけに、あまりにも大きな負の遺産を背負っています。そのためいつまで経っても現象レベル・交霊会レベルのスピリチュアリズムを卒業できずにいます。教会(スピリチュアリスト・チャーチ)の指導者自体が「霊的無知」の状態にあり、霊的真理を正しく理解していないため、スピリチュアリズム全体の進歩を足止めしています。
それに対し日本のスピリチュアリズム運動は、『シルバーバーチの霊訓』を指針として活発に展開しています。シルバーバーチの価値を理解したスピリチュアリストたちは、霊的真理の伝道に意欲的に取り組んでいます。こうした日本のスピリチュアリズムの状況は、間違いなくトニーにとって大きな驚きであり刺激になったはずです。事実、それ以前にはあまり取り上げられることのなかったシルバーバーチの記事が、ツーワールズの誌面に多く登場するようになりました。新しいサイキックニューズでは『シルバーバーチの霊訓』が、これまでにない大きな存在感を示すようになっていくものと確信しています。
英国スピリチュアリズム界は、さまざまな試行錯誤と紆余曲折の歩みを経て、負の遺産を少しずつ拭い去りながら、新たな段階へ歩みを進めようとしています。その中心人物として大きな責任を担っているトニーに対して、心からのエールを送ります。