7.暗黒の地上世界
――地上世界を覆う悲劇とその原因
私たちを取り巻く2つの世界
私たち地上人は2つの世界に取り囲まれて存在しています。霊的世界(霊界)と地上世界(物質世界)です。地上人は死とともに肉体を脱ぎ去り、霊界に入ります。そしてそこで永遠の生活を送るようになります。霊界は、私たち人間にとって本来の世界・メインの世界です。
霊界の存在を信じられない人は、「地上世界がすべてであり、死とともに人間は消滅する」と考えていますが、それは間違いです。どれほど霊界の存在を否定する人間も、自分が実際に霊界へ行き、その事実を目の当たりにすると、否応なく霊界が実在することを認めざるをえなくなります。「霊界などない。死ねばすべてが消滅する」と強弁できるのは、地上世界にいる今のうちだけなのです。
地上人生は、霊界で生活するための準備期間
私たちが生活を送っている地上世界は、霊界へ行く前に準備をする世界です。人間にとって本来の世界・メインの世界は、どこまでも霊界です。それは地上世界での生活が数十年、長くても百年ほどであるのに対して、霊界での生活は、2千年、5千年、1万年、10万年……と、永遠に続くことからも明らかです。霊界には地上のような死はありませんし、存在が消滅することもありません。永久に霊的成長の歩みが続くのです。地上人生は霊界での生活を始める前の、ほんの一瞬の準備期間にすぎません。
ところが地上世界の大多数の人間は、霊界の存在も、地上がそのための準備の場所であることも知りません。人間にとって最も重大な霊的事実を、全く理解していないのです。
地上世界の2つの存在目的
5章(光り輝く霊的世界の様子)と6章(霊的世界の存在者たち)では、霊界の様子とそこに住む存在者について見てきました。それを通して霊界の真相を理解していただけたものと思います。人間にとって霊界が本来の世界・メインの世界であるなら、今、私たちが生活している地上世界はいったい何のためにあるのでしょうか。地上人生が霊界で生活するための準備期間であるなら、私たちは何をしたらよいのでしょうか。
結論を言えば、霊界へ行くための準備とは――「物質世界において基本的な霊的成長をなす」「物質世界ならではの初歩的な霊的成長をなす」「霊界で生活するのに必要となる基本的な霊性を身につける」ということです。これが霊界での生活に向けての準備の内容です。地上世界は、霊界で生活を始めるための初歩的な“訓練学校”と言えます。地上世界でしっかりと準備をすれば、霊界での永遠の人生をスムーズに出発することができるようになります。以上が、神が物質世界を創造された目的です。
地上世界には、これとは別のもう1つの目的があります。人間は神から分霊を付与されたことによって“永遠の個別性”を持ち、「神の子供」として地上に誕生することになりました。神は、地上世界を新しい魂(人間)が誕生し、永遠の人生を出発する場所として定められました。人間は物質世界という最も次元の低い世界に生まれ、そこから永遠の霊的進化の歩みを始めることになるのです。(*天使は人間とは違い、霊界で誕生し、霊界から永遠の進化の道をたどっていきます。この点で天使と人間は根本的に異なっています。)
神の分霊化にともなう新しい個別霊の誕生場所が地上世界であるということは、新しい魂が地上に次々と現れ、増加していくということを意味しています。それは同時に、地球を含め物質世界(他の天体)に住む人間的存在は、霊性進化の出発段階にいるということを意味しています。
長い間、議論の的となってきた「輪廻再生」とは、地上世界でなすべき最も初歩的な霊的成長を達成できなかった人間が、死後もう一度、地上に誕生して地上生活をやり直す現象のことです。物質世界での初歩的段階を卒業するために、地上世界に戻って人生をやり直すのが「再生」なのです。大半の地上人は、自分たちが最も未熟な段階にいることなど認めたくはないでしょうが、霊界から見ると地上世界は、きわめて霊性レベルの低い世界です。無限の霊的進化のいちばん低いステップを這い上がろうとしているのが、私たち地上人(地球人)なのです。これまで地上人は、科学や物質文明の進歩を誇りそれを賛美してきましたが、永遠の霊的成長の観点から見ると、それらは取るに足りないものなのです。
最も重大な真理を知らない地上人
地上世界は、今述べたように神によって2つの目的のもとに創造されました。物質世界の存在意義とは、神が意図するこの2つの目的を達成することにあります。「新しい魂を次々と生み出すこと」「新しい魂が霊界へ行って生活するための基本的な霊的成長をなすこと」――これが地上世界の存在意義であり、地上世界を理解するうえで最も重要な真理なのです。言うまでもなくこの真理は、地上世界のすべての人間が真っ先に知らなくてはなりません。
現在までの地球は、神の意図(地上世界の存在意義)から大きく外れた世界となってきました。そして地球上の至る所で悲劇が発生してきました。人間としてなすべき初歩的な霊的成長も達成できず、霊性の低さゆえに自ら苦しみを招き、地球上に悲劇を蔓延させてきたのです。
本章では、私たちを取り巻く現在の地上世界と、そこに住む地上人の実態について見ていきます。霊界が“光り輝く明るい世界”であるのに対して、私たちが住んでいる地上は“暗黒の世界”です。そして多くの人間が悲劇の中で苦しんでいます。地球上に蔓延している悲劇の実情は、地球がまさに暗黒の世界であることを示しています。本章では、そうした悲劇の実態と、暗黒の世界をつくり上げることになってしまった原因について学んでいきます。そして地球人類を苦しめている悲劇をなくすために、霊界人によって救済活動が展開されるようになった経緯についても見ていきます。地上的な視点ではなく霊的な観点から、すなわち霊界人の視点から地上世界の本質を学び、その真相を理解していきます。
本章の内容は次のようになっています。
- (1)物質世界の本質と真相を理解する方法とは――霊界から地上世界を見て、2つの世界を比較する
- (2)光り輝く明るい霊界と、悲劇が蔓延する暗黒の地上世界
- (3)地上世界の悲劇の根本原因――霊的無知・物質中心主義・利己主義
- 1)地上人類の霊的無知
- 2)物質中心主義と利己主義の支配
- 3)使命を果たさなかった地上の宗教
- 4)地球上に蔓延する6つの悲劇・不幸(地球上の悲劇の全体像)
- (4)地上世界の悲劇〈1〉――戦争
- 1)戦争という悲劇
- 2)戦争の原因
- 3)真の反戦平和運動とは
- (5)地上世界の悲劇〈2〉――貧困・飢餓
- 1)極度の貧困と飢餓という悲劇
- 2)地球規模の飢餓発生の原因
- 3)「飢餓の問題」の解決方法
- 4)現代のグローバル経済が生み出す先進国内での極度の貧困
- (6)地上世界の悲劇〈3〉――間違った宗教がつくり出す魂の牢獄
- 1)本来の使命を果たせなかった地上の宗教
- 2)宗教による魂の支配と霊的牢獄
- 3)宗教エゴが生み出すさまざまな悲劇
- 4)スピリチュアリズムの「霊的真理の普及」による間違った宗教の一掃
- (7)地上世界の悲劇〈4〉――精神の堕落・退廃
- 1)人間の精神の堕落・退廃という悲劇
- 2)伝統的宗教の衰退にともなう人間の本能化
- 3)肉体本能と利己愛に支配された現代人の特徴――精神的に堕落・退廃した現代人の実態
- 4)利己愛・自己愛がもたらす社会問題
- (8)地上世界の悲劇〈5〉――動物虐待・自然環境破壊
- 1)人間と他の生命体との相互依存・共生関係――生命界を支配する摂理とは相互依存・共生関係
- 2)動物を虐待する人間の罪
- 3)人間を生存させている地球の自然環境――自然界の一部分としての人間
- 4)人間の利己的な欲望追求が自然環境を破壊
- 5)果てしない経済発展・経済成長という幻想がさらなる自然破壊を進める
- (9)地上の悲劇が招く“霊界の悲劇”
- 1)地上人生の大目的を達成せずに他界する多くの地上人
- 2)高級霊の嘆きと未熟霊への救済
- 3)霊界最下層の地縛霊と暗黒スポット
- (10)スピリチュアリズムによる「地球人類救済活動」――霊的真理の普及による悲劇の追放